2013.05.13

東日本学生リーグ戦・一部Aグループ展望

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 一部Aグループは、昨年優勝の日体大、昨年は予選ブロックで拓大に惜敗して決勝進出を逃した日大、昨年の全日本大学選手権で団体優勝を遂げ、小幡邦彦コーチ(2004年アテネ・オリンピック代表)の指導手腕が発揮されつつある山梨学院大が優勝を争いそう。

 日体大は卒業によって選手が大量に抜けたが、55kg級に全日本王者をかかえており、スタートダッシュで勢いをつけたい。日大は昨年の主力が残っており、重量級が頼もしい。

 山梨学院大は55、60kg級に全日本大学王者が残っており、この2階級を勝つことでチームの勝利を近づけたい。120kg級にカザフスタンからの留学生が加わり、チームスコア3-3で最重量級にもつれれば、勝利の可能性は高くなる。(文=増渕由気子、樋口郁夫)


《3強の試合日程》
16日(木) 13:00~14:00 日大-山梨学院大
         15:00~16:00 日体大-山梨学院大
17日(金) 11:00~12:00 日体大-日大


■連覇を達成し、常勝チームの道を作るか…日体大

 昨年、一部リーグ復帰戦で5年ぶりの優勝を果たした日体大は、今年も強豪選手が在籍し、2連覇を狙えそうだ。松本慎吾監督は「昨年のチャンピオンという意識はない。去年同様、1試合ずつ着実に闘っていき、決勝に進むことしか考えてない」と話し、王者のおごりは全く見当たらない。

森下史崇

昨年は、初戦で前年優勝の早大が相手というスケジュールだったが、今年は昨年の下位チームから徐々に対戦するという“本来の日程”。リーグ戦の前半は若手を起用しつつ要所でレギュラーを出場させ、様々なオーダーが見られそうだ。

 ライバルは第3日に対戦する昨年の全日本大学選手権・団体優勝の山梨学院大や、軽量級と重量級に全日本トップレベルの選手を擁する日大だ。松本監督は「集中しないと」と気を引き締める。

 松本監督は今年のチームの柱に55kg級の森下史崇(茨城・霞ヶ浦高卒)を挙げた。「55kg級の出だしで流れに乗らないといけません。森下は去年、初日の早大戦で負けるなど苦い思いをしました。今は学生王者に加えて全日本王者。全日本合宿や国際大会などの経験もあり、どのような状況でも勝たないといけない選手。森下が今回のキーマンでしょう」と、軽量級の要に期待を寄せた。

 チーム編成は、森下、66kg級に学生王者の砂川航介(茨城・霞ヶ浦卒)、96kg級または120kg級に米平安寛(宮崎・都城高卒)の4年生に加え、4月のJOC杯60kg級優勝の中田陽(兵庫・育英高卒)、同じく84kg級で優勝した櫻庭正義(秋田・秋田商高卒)らを「状況に応じて起用を考えている」(松本監督)。若手がどこまでチームを盛り上げられるか。


■全日本トップレベル3選手を抱え、今年こそ優勝!…日大

岡倫之

60kg級と96kg級に全日本選抜王者の池田智(京都・京都八幡高卒)と山本康稀(埼玉・花咲徳栄高卒)、120kg級に全日本王者の岡倫之(埼玉・花咲徳栄高卒)を擁する日大。昨年も決勝進出の力を持っていたが、力を出し切れなかった。今年は、同じ過ちを繰り返すことなく勝ち上がりたい。

 池田と山本はこの冬、デーブ・シュルツ国際大会(米国)に出場。岡は全日本チームのメンバーとしてワールドカップ(イラン)出場の機会を得ており、国際大会を通じて実力をつけていることが予想される。
 
 “あと1勝”を期待されるのが84kg級の細谷翔太朗(埼玉・花咲徳栄高卒)。素材の素晴らしさは入学時から言われていたが、昨年は全日本学生選手権、全日本大学選手権とも3位どまりで実力を発揮し切れなかった。最上級生になった今年こそ、チームに貢献せねばなるまい。

 富山英明監督は、重量級に好選手を抱える布陣について、「60kg級の池田が勝ってくれてこそ意味が出てくる」と話し、軽量級のキーマンの活躍を期待する。一方で、山梨学院大に加入したカザフスタンからの留学生の存在は脅威に感じている。全日本王者・岡の奮起が望まれるとともに、74kg級までに2勝、3勝をマークしてくれることを期待する。

 今年のJOC杯でともに2位に入った66kg級の新川武弥(京都・網野高卒)、74kg級の小山内光将(埼玉・花咲徳栄高卒)がどこまで踏ん張れるか。

 富山監督は「戦力はどことも大きな差はない。最後は気持ちの問題」と選手の奮起を期待した。


■120kg級に“黒船”加入! リーグ戦優勝へ弾み…山梨学院大

 昨年の全日本大学選手権・団体優勝の山梨学院大は、昨年のリーグ戦では4勝3敗と成績を伸ばせず優勝戦線に躍り出ることはできなかった。早大、日体大に敗れ、さらに専大に3-4と競り負けた。

オレッグ・ボルチン

今年のチームは昨年と同じ轍(てつ)は踏まないとチーム一丸となっている。全日本大学選手権3位の濱本豊主将(山口・鴻城高卒)を中心に、55kg級には昨年大学界に鮮烈デビューを飾った全日本大学王者の高橋侑希(三重・いなべ総合学園高卒)、60kg級には同じく大学王者の鴨居正和(香川・香川中央高卒)が在籍。軽量級の2枚看板が勝ち、濱本主将らも勝って重量級につなぐのが必勝パターンだろう。

 今年は120kg級にカザフスタンからの留学生、オレッグ・ボルチンに各校が注視している。小幡邦彦コーチは「アジア・ジュニア選手権3位の実績があり、体つきは以前在籍していたロシアの留学生、ボリス・ムジコフ(120kg級で2008年に学生四冠王を達成)よりすごいです」と話し、潜在能力は折り紙つき。即戦力になりそうだ。

 チームの雰囲気も変化している。昨年鮮烈な大学デビューを果たしたインターハイ3連覇で全日本大学選手権優勝の高橋侑希がチームの意識改革に一役買っている。小幡コーチは「スカウトで実績がある選手ばかりを獲れない時代が続き、勝ち方や練習方法を知らない選手が多い中、私が『やれ』と言わなくても、高橋は率先して練習ができる。高橋の姿を見て、上級生たちも次第に自主的に練習をこなせるようになりました」とチームの雰囲気がリーグ戦制覇に向けて整いつつある。