2013.05.01

【JOC杯・特集】役者のそろった日本の伝統階級を1年生が制す…ジュニア・男子フリースタイル60kg級・中田陽(日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)

下馬評覆しての1年生Vだ! JOCジュニアオリンピックカップのジュニア・男子フリースタイル60kg級は、1年生の中田陽(日体大=右写真)が決勝で昨年の西日本学生1年生王者の有元伸悟(近大)をラスト5秒で逆転勝ちを収めて初優勝。昨年の岐阜国体で少年グレコローマンの部で優勝した中田が、フリースタイルで大学ジュニアを制した。

 中田は「大学ではフリースタイルをやろうと決めていたけど(まさか優勝とは)…。今回はまぐれの連続です。自信にはなったけど、信じられない」と、驚きを隠せない様子で目を輝かせた。

■3試合連続で実績のある2年生を撃破

 いばらのトーナメントを制した優勝だ。準々決勝で、インターハイ王者で国士舘大の軽量級の柱である阿部隆宏と対戦する組み合わせ。準決勝では、日体大の先輩で昨年の全日本学生選手権で1年生で決勝まで進んだ川瀬克洋が勝ち上がってくることが予想され、反対ブロックには、有元や昨年インターハイ王者の高谷大地(拓大)がいる役者がそろったと言わんばかりのトーナメントだった。

 中田は「川瀬先輩には練習で全然勝てないので、目標は阿部選手に勝ってベスト4に入ることでした」と振り返る。だが、阿部に競り勝ったことで「欲が出てきた」。玉砕覚悟で挑んだ川瀬との一戦は、高校グレコローマンで頂点を獲ったパワーを最大限に活かし、がむしゃらに攻めた結果、先輩を撃破することができた。

決勝戦はシーソーゲームだった。阿部や川瀬との激戦で体力は消耗していたが、「思ったよりも動けた」と、第1ピリオドにフォール態勢に持ち込んで5-0と大量リード。第2ピリオドは「相手のタックルがうまかった」と落としてピリオドスコアはタイになったが、第3ピリオドで0-1とリードされた残り5秒、有元が守りに入ったところを見逃さず、得意技の外無双で4-1と逆転。大学1年で日本屈指の激戦区である60kg級を制した。

 阿部、川瀬、有元と3試合連続で実績のある2年生を撃破してつかんだ優勝。「先輩はプレッシャーを感じていたと思う」と推測する一方、自身は怖いもの知らずで果敢に攻めた。勝利の女神は怖いもの知らずで攻めた選手に微笑んだ。

 「まだ自分が世界ジュニア選手権の代表という自覚がない」と話す中田だったが、最後は「海外での公式戦は初めて。どれだけ自分の力が通用するのか試したい」と表情を切り替えた。怖いもの知らずの果敢な姿勢が、世界で通じるか-。