※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
叔父のKID(左)、祖父の郁栄さん(右)とアーセン
佐々木は4年前の全国中学選手権に出場したあと、ハンガリーに単身留学。現在16歳で、ハンガリーのインターナショナル高校の2年生に相当するクラスに通学。4年間の地道な努力で、「ハンガリー語は一応ペラペラになりました」と生活面でも充実した日々を送っている。今大会は、一時帰国して4年ぶりの国内戦に出場。それを優勝で飾った。
■ハンガリーのオリンピック選手とも練習
母の美憂さんは来場しなかったが、セコンドには祖父で1972年ミュンヘン五輪代表の山本郁栄氏がつき、マットサイドには叔父の総合格闘家の山本“KID”徳郁が声援を送るなど豪華な顔ぶれ。レスリング一家の血に欧州仕込みの技が覚醒したのか、佐々木は決勝で櫻庭功大(秋田・秋田商高)を2-0で破って優勝した。
決勝で闘うアーセン
久々の日本のマットについては、「初日は本当に本当に緊張しました」と苦笑いを浮かべたが、全体を通して「気持ちよくやれた」と満足そう。現在のレスリングの練習環境は、学校の部活動ではなく、ムーラードというクラブチーム。「グレコローマンが好きで、今はグレコに絞って練習しています」という。
オリンピック選手もいるチームで、今はその選手のトレーニングパートナーに選ばれ、ハンガリーのナショナル合宿にも参加していることが成長につながっているようだ。
スター一家に生まれた佐々木の夢は、五輪出場、そして世界選手権優勝だ。「みんな(祖父、母親、叔母の元世界女王の聖子、叔父のKID)を自分は超えたいので頑張りたい」と、グレコローマンの強国で近隣諸国にアクセスしやすいハンガリーを選び、渡欧して4年が経った。
■グレコローマンをやるなら、ハンガリー!
決勝で闘うアーセン
大会の後はすぐにハンガリーへ戻って練習を積む予定。「今はできるだけハンガリーにいたい。友達と離れてさびしいですけど、(グレコローマンをやるには)日本より勉強になります。遠征でクロアチアなどにも行きました。これもオリンピックに出て恩返しするためです」と、高い意識で臨んでいる。
叔父のKIDも「会うたびに成長している。今後も日本の大会に出て、ガンガン魅せるレスリングをしてほしいね」とエール。
レスリング界きってのサラブレット、佐々木アーセンが潜在能力をいかんなく発揮したJOC杯だった。