※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
JOCジュニアオリンピックカップのジュニア・男子フリースタイル74kg級は、昨年の学生二冠王者で今年7月のユニバーシアード(ロシア)代表の嶋田大育(国士舘大=右写真)が、決勝で小山内光将(日大)を下して優勝。カデット時代から通算6連覇を達成し、最後の出場となるJOC杯を締めた。
昨年はロンドン五輪の練習パートナーに選ばれて日本代表チームに帯同。夢の舞台を間近で観戦し、様々なことを学び、学生のタイトルを総なめにするなど飛躍の年だった。だが、今大会は、万全の状況でつかんだ勝利ではなかった。
嶋田は早生まれのため、3年生ながら今年もJOC杯に出場。「チャレンジャー精神を意識していた」とはいえ、相手は大学1、2年生や高校生ばかり。「やはり学生チャンピオンの自分が圧勝しなければと思ってしまった」と気持ちが空回り。さらに2月の海外遠征で負った左ひざのけがが完治せず、気持ちと体がうまくかみ合わない試合が続いてしまった。
■高校選手相手に薄氷を踏む思いで勝利
その頂たる試合が、準決勝の浅井翼(京都・京都八幡高)との対戦だった。「去年の全日本選手権でも対戦して、失点しました。体つきは自分よりいいし、手足も長い。浅井選手を高校生だとか格下とか思っていない」と本気モードで臨んだが、ローシングルのタックルを受け、けがをしていたとはいえ今回も失点。第1ピリオドは1-1のラストポイント、第2ピリオドも1-0ときん差で勝利し、薄氷を踏む思いをした。
決勝で闘う嶋田
決勝の小山内戦も、“浅井ショック”をひきずったのか調子は悪く、第1ピリオドは4-3ときん差で、第2ピリオドでは先にタックルで3失点するなど、中盤まで王者らしさが出なかった。
■きれいな勝ち方はいらない!
「今日はきれいに勝てないんだな、と思ったのです。最後のJOC杯で、自分は第1シード。みんなが僕を引きずりおろそうと必死になってくる」と、冷静に自分の置かれている立場を再確認。すると気持ちが吹っ切れ、「きれいなレスリングじゃなくてもいいから、ガツガツ取りに行こうと思った」という気持ちになった途端、嶋田のエンジンがかかった。前に出て、タックルやニアフォールなどで、あっという間に6-3と逆転勝ち。
決勝で闘う嶋田
この優勝で、7月のユニバーシアードに加えて、8月の世界ジュニア選手権(ブルガリア)の代表もほぼ手中に収めた。「過去2度の世界ジュニア選手権ではいい成績を取れなかった。昨年、森下先輩(史崇=日体大)が銅メダルを獲ったのを見て、自分も国際大会でメダルと思っている」と、嶋田の目標は国際戦で結果を残すことにある。
4年に1度の祭典であるユニバーシアード、そして最後の世界ジュニア選手権嶋田がジュニアの総決算に挑む。