2013.04.14

レスリング存続の条件は、「グレコローマンの廃止」または「女子グレコローマンの導入」-!?

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 米国の「USAツデー」紙は4月9日付の紙面で、国際オリンピック委員会(IOC)のクリストファー・デュビ競技部長(スイス)が世界最大の通信社のAP通信に対し、2月のIOC理事会でレスリングが除外勧告となった理由に、グレコローマンが男子7階級、女子0階級という状況であることが一因であることを語った。

 同紙は「a big part of the reason」という言葉を使っており、かなり大きな要因だったとしている。

 IOCの理念は男女平等であり、すべての競技・種目に男女の参画を目指している。デュビ競技部長は「女子のグレコローマンが実施されていないことは常に議論されていた」と、これまで世界のレスリング界ではまったく議論されていなかったことがIOC内で問題となっていたことを証言。「今となっては2月の悪名高い投票」(February’s now infamous vote=同紙)の要因だったことを認めたという。

 国際レスリング連盟(FILA)は現在、2020年五輪からの除外危機に対して総力戦で取り組んでおり、来月にモスクワで臨時総会を開催するが、同部長は「FILAの決断を待っている。リオデジャネイロ五輪へ向けて、どんな提案をしてくるか関心を持っている」と話した。

 2016年リオデジャネイロ五輪は、レスリングを含めて「28競技306種目、1万700選手」で行われることが決まっており、実施種目や各種目の参加国数は今年8月9日のIOC理事会(モスクワ)で決定される。国際バスケットボール連盟は、2010年ユース五輪(シンガポール)で実施されたコート半面で行う「スリー・オン・スリー」(3人制)を申請しているほか、国際自転車競技連合や国際水泳連盟も種目増をリクエストしている。

 FILAは4年前の同様の理事会で、ロンドン五輪での女子の7階級実施を要望したが、IOCの回答は「18階級の中で調整するのであれば女子の階級増を認める」で、FILAは受けなかった。

 これまで実施されていない女子グレコローマンを、リオデジャネイロ五輪の実施種目にリクエストするのは無理があるが、男女参画というIOCの理念に従うためにも、「男子グレコローマンの削除」か、「男子の階級減・女子グレコローマン導入」を決断し、5月末のIOC理事会(ロシア・サンクトペテルブルグ)に示さなければならないのかもしれない。


 ロンドン五輪で実施された26競技302種目のうち、男子のみが実施されている種目は下記の通り。

 陸上・1種目(50km競歩)
 水泳・1種目(1500m自由形)
 ボート・2種目(舵なしフォア、軽量級舵なしフォア)
 体操・4種目(種目別つり輪、あん馬、平行棒、鉄棒)
 ヨット・4種目(フィン級、スター級、レーザー級、49er級)
 フェンシング・1種目(サーブル団体)
 射撃・3種目(ライフル射撃25mラピッドファイアピストル個人、同50mライフル伏射個人、クレー射撃ダブルトラップ)
 重量挙げ・1種目(=男子8階級、女子7階級の実施)
 レスリング・10種目(=男子14階級、女子4階級の実施)
 ボクシング・7種目(=男子10階級、女子3階級の実施)
※カヌー・6種目(=男子11種目、女子5種目の実施)
 
 ※カヌーは、距離を別にすれば、男子のみの種目はスプリント・カナディアンシングル、同カナディアンペア、スラローム・カナディアンシングル、同カナディアンペアの4種目のみ)

 自転車は、2008年北京五輪で「男子11種目、女子7種目」だったのが、男子の種目を廃止するなどしてロンドン五輪では「男女とも9種目」と“男女平等”を実現。カヌーも北京五輪では「男子12種目・女子4種目」だったのが、ロンドン五輪では「男子11種目・女子5種目」と、わずかだが男女差を縮めている。

 ロンドン五輪で女子が採用されたボクシングが、スタートの段階で男女に7種目(階級)の差があるのは仕方ないと思われるが、2004年アテネ五輪で採用されて3大会目を迎えたレスリングで男女差が10種目(階級)のままだったのは、問題だったかもしれない。

 女子の参加をうながすため7階級実施をリクエストしていたFILAだが、自転車やカヌーが種目の合計数を変えない中で男女平等を目指していたのに対し、レスリングは種目増をリクエストして女子の種目増を要求していた。

 参考までに、女子のみが実施されている種目は下記の通り。水泳はリオデジャネイロ五輪で男子800m自由形と女子1500m自由形の実施を求めている。

水泳・3種目(800m自由形、シンクロ・チーム、同デュエット)
体操・4種目(種目別段違い平行棒、同平均台、新体操個人総合、新体操団体)