2013.03.30

【全国高校選抜大会・特集】鹿屋中央(鹿児島)から10年ぶりの全国選抜チャンピオン!…66kg級・木下貴輪

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=池田安佑美、撮影=飯島隆)

10年ぶりの王者誕生だ! 全国高校選抜大会の66kg級は、九州選抜大会王者の木下貴輪(鹿児島・鹿屋中央)が初優勝を遂げた。鹿屋中央勢としては2003年の阿佐光一郎(69kg級)以来10年ぶりの王者となった。

■勝ち上がるたびに強さを発揮

 決勝では木村優太(群馬・館林)を第1ピリオドでニアフォールに追い込み、第2ピリオドでは四の字アンクルホールドで一気にテクニカルフォールへ。快勝で優勝を決めた。

 木下は「九州王者として、優勝するつもりでやってきました。昨年、(60kg級で)2位だったので、やっと優勝できることができた」と会心のガッツポーズ。セコンドで見守った、野口勝監督も「自分が優勝したようだ」と喜びを隠せなかった。

 木下が準々決勝、準決勝と勝ち上がるたびに、鹿屋中央の応援席の声援が一段と増していった。「とても力になった」という木下は、序盤こそクリンチ勝負もあったが、試合を重ねるごとに調子を上げていった。「今日はがぶりがよく決まった。アンクルホールドも安定して得点できていた。この試合で成長できたと思う」と振り返る。

 昨年はこの大会の2位のあと、JOC杯ジュニアオリンピック・カデット63kg級で優勝。世界カデット選手権にも出場し、国内外で経験を積んだ。木下の急成長の秘密は、今年で監督就任を迎える野口監督の手ほどきにあった。「監督がいろいろな技を教えてくれるんです」(木下)。

■スター選手だった野口監督の育てた初の全国チャンピオン

 野口監督は、モスクワ五輪の幻の代表だった父・次夫さんの英才教育を受け、多彩な技でインターハイで史上2人目の1年生王者になった高校界の元スター選手。現役を引退したのちに同校で指導を始め、5年前から監督に就任した。

 「木下は上を目指したいと意欲を持っている選手で、去年JOC杯などで優勝しても有頂天にならず、コツコツと練習していました。僕も木下と同じ階級の選手だったので、僕が知っている技を教えているんですが、本人がそれを吸収して、さらに自分なりの技に仕上げているんです。今日はその技を出せていましたね」。指導者に恵まれた木下は、その環境を味方に、地道に精進したのが功を奏したようだ。

 久々の全国優勝を鹿屋中央にもたらした木下の目標は、夢の三冠王だ。「インターハイも国体も優勝したい」。有言実行すれば、同校からは1998年70kg級の黒田清志以来の快挙となる。

 監督就任以来、初の全国チャンピオンを作った野口監督は「今年はチャンス。久々の三冠王を出したいです。そして、地方でも強くなれるということを見せたいですね」と意気込みを見せた。