※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美 写真=飯島隆)
チームを支えた樋口黎主将
2月の関東高校選抜大会で優勝したものの、「全国で勝つには厳しい」と評していた大澤友博監督だったが、ふたを開けてみれば、7-0か5-2のスコアで勝ち進み、快勝続きだった。
■50kg級の選手の頑張りがチームに流れをつくる
原動力は先陣を切る選手の活躍だった。「今日は50kg級の高橋拓也、小林大樹の活躍に尽きます。“先鋒”の選手が流れを霞ヶ浦に引き寄せてくれた」と大澤監督。初出場ながら準決勝に進出してきた三重のいなべ総合(三重)との対決では、50kg級に起用した小林が、いなべの主力選手である藤田雄大に食らいついてクリンチ勝負で2-1で勝利。そこからは勝つべき選手が星をつないで、84kg級の蛭田瞭平が勝負を決めた。
決勝で貴重な活躍をした高橋
続く55kg級で主将の樋口黎が2-0と快勝すると、完全に流れは霞ヶ浦のものに。60kg級の松宮大樹が第2ピリオドをローリング地獄で9-3でものにした瞬間、84kg級の不戦勝と合わせて4勝目となり、霞ヶ浦が3年ぶりの王座奪還を果たした。
■4000人分の署名に後押しされてマットへ
この冬、全国の高校生に激震が走った。2020年五輪大会からレスリングを除外する可能性を国際オリンピック委員会(IOC)が発表したことだ。昨年のロンドン五輪で4つの金メダルを獲った日本には、未来の金メダリストを夢見て競技に取り組む選手が多数いる。全国優勝の常連である霞ヶ浦もしかりで、選手たちにとっては晴天の霹靂(へきれき)だった。
大澤監督が「ニュースが流れた当日は、ショックを隠せない生徒もおりました。卒業予定の生徒からは、(卒業後)レスリングをやりたくないという声もあった」と話せば、樋口主将も「2020年は年齢的に目指せる大会だったので、けっこうショックだった」と振り返るように、指導者と生徒ともに心労は大きかった。
重量級を支えた松宮
さらに、選手たちの背中を押してくれたのは、700名の校友たちの署名活動だった。インターハイで22度の優勝を果たしている高校レスリング界の雄・霞ヶ浦では、レスリング除外問題に教員と生徒の関心が高く、学校を挙げて署名活動に協力。集まった数は現在4000人分にものぼるという。1枚20名の署名用紙を単純計算しても200枚以上の用紙が集まり、大澤監督は「子供たちも絶対にレスリングがなくならないと思えるようになった」と話す。
五輪除外ショックを校友全体のエールを力に変えて王座に返り咲いた霞ヶ浦。大澤監督は「夏のインターハイは1年生が加入して、各校強くなりますけど、うちも鍛えて優勝できるように頑張りたい」と春夏連覇に意欲を見せた。