※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
女子ワールドカップ(3月2~3日、モンゴル・ウランバートル)の予選3回戦、飯島千晶選手(日大)-モンゴル戦で、飯島選手のクリンチからの攻撃で、場外に押し出したと思われながら、足が先に場外に出ていたため、飯島選手の失点となったシーンがありました。
片足を取った飯島選手は、相手を場外際へ追い詰め、場外へ向けて相手の体は完全に宙に浮き、マットに落ちるだけの状態となりました。しかし、マットに落ちるよりも先に飯島選手が右足をゾーンの外に着いていました。(下記動画参照)
当初の審判団の判定は飯島選手の1点でした。モンゴルのチャレンジによって会場に上映されたビデオでは、相手の体が空中にある時に飯島選手の右足がゾーン外に着いているシーンがしっかりと映っており、ビデオはこのシーンでストップ。館内の大歓声の中、審判はモンゴルの1点と変更しました。
相撲では「死に体」という言葉があり、土俵の外の空中に浮かされて自力で回復不可能な状態になった時は、その時点で勝負が決まり、攻撃側の力士が多少先に土俵の外に足を踏み出したり、多少先に手を土俵についたり(かばい手)しても、勝者となる慣用ルールがある。それに準じれば、飯島選手に1点が入るケースだ。
場内スクリーンに映し出された決定的なシーン。飯島選手の右足の方が相手の体より先に場外に着いている。
この理論でいけば、場外に出されそうにになった場合は、できるだけ高くジャンプして滞空時間を長くし、勢いがついている相手が場外に出るのを期待するのも、ひとつの手ということになるが…。
ワールドカップの審判長を務めた金益鐘氏(韓国)は「足が先に場外に出れば負けとなります。試合はゾーン内でやるべきもの。ゾーンの中でテークダウンすればいい」と話した。
(注)最近の国際大会の審判会議では、「フリースタイルのクリンチで相手を持ち上げて故意に場外に出した場合や、グレコローマンで相手を場外に突き出した場合は、ともに0点で、マット中央からスタンドで試合再開」という報告がある。正式通達が待たれる。
(監修=日本協会・斎藤修審判委員長)