※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
ロンドン・オリンピックのような勢いを感じた…笹山秀雄監督
モンゴルから帰国した日本チーム(4日、成田空港)
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■笹山秀雄監督(自衛隊)「若手チームで臨み、メダルも厳しいかなと思った。みんなが力を発揮してメダルを持ち帰ることができたのはよかった。アメリカ選手は力はあるけど、技術的には今ひとつなので、何とかやってくれるんもでは、という期待はあった。米国戦の最後は、選手が力のすべてを出し切ってくれ、神様が降りてきたように感じた。
63kg級の伊藤が世界チャンピオンを破ってくれて流れが日本に来た。(金3個を取った)ロンドン・オリンピックにような勢いを感じた。それだけの試合をやってくれたことにうれしさを感じた。チームが一丸となる団体戦の試合を経験することは、個人の実力アップにもつながる。自信につなげてほしい。
(全敗だった栄は)急に試合出場が決まり、気持ちの面でも大変だった思うが、いい経験だったと思う。悔しい気持ちを今後につなげていけば、必ず伸びる」
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■吉村祥子コーチ(エステティックTBC)「試合前は、『やってくれるだろう』という思いと、若手チームということでの不安とがあった。全員が力を合わせて3位を勝ち取ってくれたことはうれしい。各選手とも課題が見つかった一方、自信をつけたところもあるし、いいチャンスをもらったと思う。3位決定戦では重量級が頑張ってくれた。日本の重量級は選手数が少なくて(日本として)不安も多いけど、体力をつけて技術を覚えれば、十分に世界で闘っていける選手が育ってくれる期待を感じた。
アメリカもカナダも、両手首や腕を取ってきたり、手をマットにつけるくらい低く構えたりと、日本のタックルをどう防ぐかしっかり研究している。そうした相手に真正面から攻めようとしても、なかなか攻められるものではないし、時間を稼がれる。タックルに入る前の突破口を見出すことなど、今後どう闘うかを考えていきたい」
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■齋藤将士コーチ(警視庁)「アメリカ戦では追い込まれて、一時はどうなるかと思ったが、チームが一丸となって闘え、最低ノルマの3位を確保できたことはよかった。反省点も多いので、いちがいに『よかった』とは言えないが、選手をほめてやりたい。
日本選手は全体として体が小さい。国内の練習では、自分より大きい選手と積極的に練習し、外国選手の重さや体力に対抗できる体力をつけてほしい。精神的には、今回は執念深い試合ができたので、今後も粘り強い闘いを期待したい。アウェーのすごい声援の中ででも力を出すには、ふだんから試合を想定し、追い込む練習を積むことだと思います」
■米国選手の体格と体力に負けた…48kg級・入江ゆき(九州共立大)
1回戦 ○[2-0(TF7-0=0:52、TF6-0=1:06)]Priyanka Singh(インド)
2回戦 ○[フォール、1P1:44(F7-0)]Jasmine Mian(カナダ)
3回戦 ○[2-0(TF7-0=1:00,4-2)]Enkhjargal Tsogtbazar(モンゴル)
3決戦 ●[0-2(1-1L.0-2)]Alyssa Lampe(米国)
「最後のアメリカ戦は、相手の方が体が大きく、体力があって、自分から攻めることができなかった。気持ちで負けたということではなく、体力の差です。もっと体力をつけて自分から攻められるようにしたい。(予選3試合は全勝だが)押さえるべきところを押さえられなかったし、極めるべきところを極められなかったりした。もっと早くに勝負を決めないといえない。
団体戦での闘いは、個人とは違います。メダルを持ち帰れてよかった。体力をつけ、今後も日本代表として恥ずかしくない試合をしたい。今年の目標は世界選手権の優勝です」
■世界一は手の届かない存在ではない…51kg級・宮原優勝(JOCエリートアカデミー/東京・安部学院高)
1回戦 ○[2-0(1-0,5-0)]Vinesh Vinesh(インド)
2回戦 ●[1-2(1-0,1-2,0-3=2:03)]Jessica Macdonald(カナダ)
3回戦 ○[フォール、2P0:34(2-0,F3-0)]Davaachimeg Erkhembayar(モンゴル)
3決戦 ○[フォール、2P0:55(0-1,F4-0)]Jessica Medina(米国)
「初戦から緊張してしまって、ガチガチになってしまいました。でも1点を大事にして勝つことができました、2試合目のカナダ戦は去年の世界チャンピオンと聞いていたので、今の自分の力を試したかった。第2ピリオドにタックルを返されて怖くなり、タックルに入っていけずに後悔が残りました。返されることを怖がらずに攻めたい。
でも、世界チャンピオン相手に第3ピリオドのクリンチにもつれたことは、世界一は手の届かない存在でないことを感じました。自信を持って世界選手権を目指したい。(モンゴル戦について)アウェーの中での試合は、中途半端な技だと相手にも1点が入ることもあるので、1点を確実に取っていきたい」
■初のシニアの大会で自分の力を試せた…55kg級・浜田千穂(日体大)
1回戦 ○[2-1(4-2,1-3,4-0)]Babita Kumari(インド)
2回戦 ○[2-0(1-0,1L-1)]Brittanee Laverdure(カナダ)
3回戦 ○[2-1(3-6,1-0=2:03,1-0)]Byambatseren Sundev(モンゴル)
3決戦 ●[1-2(1-0,0-1=2:21,0-2)]Helen Maroulis(米国)
「団体で3位になれたことはうれしい。個人的には、初めてのシニアの大会に出場して自分の力を試すことができた。勝った試合も負けた試合も。ポイントを取られてから取り返すピリオドが多かった。自分から攻めて先にポイントを取らなければ勝てない。
(「終了間際に逆転ポイントを取れることは評価できるのでは?」との問いに)その状況で必死になれるのはいいことかもしれませんが、そういう展開では勝てないと思います。ただ、タックルでポイントを取れたことは自信にはなります。最後のアメリカ戦は第3ピリオド、息が上がってしまった。もっと体力つけたい。たくさんの課題が見つかった」
■力負けはしなかったが、技術で負けた…59kg級・栄希和(至学館大)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-5)]Geeta Geeta(インド)
2回戦 ●[0-2(0-1=2:06,1-2)]Michelle Fazzari(カナダ)
3回戦 ●[フォール、1P0:48(F0-3)]Munkhtuya Tungalag(モンゴル)
3決戦 ●[0-2(0-3,1-2)]Allison Ragan(米国)
「全敗でチームに全然貢献できず、実力不足を痛感しました。初めてのシニアの大会で、多くの課題が見つかりました。タックルに入って抱え込むくせがあって、監督からも指摘されていましたが、試合でそれが出てしまいました。いつも言われていることが、試合でも出るものなんですね。ひとつずつ直していきたい。
力負けはそれほどしなかったですが、やはり技術が違いました。技術が足りなかったです。(「終始攻める姿勢はあった」との指摘に)思い切りいくしかないので、守ることなく攻めていくことだけを考えていました」
■世界女王へのフォール勝ちは自信になる…63kg級・伊藤友莉香(環太平洋大)
1回戦 ○[2-0(TF6-0=0:46,2-1)]Anita Anita(インド)
2回戦 ○[2-0(1-0,TF7-0=1:40)]Justine Bouchard(カナダ)
3回戦 ●[フォール、1P0:45(F1-2)]Battsetseg Soronzonbold(モンゴル)
3決戦 ○[フォール、1P1:59(F8-5)]Elena Pirozhkov(米国)
「初めての団体戦で、これまで味わったことのない緊張感と勝った時の喜びが経験できました。今後につながる経験だったと思います。(最後に勝った米国選手は昨年の世界チャンピオン)試合が終わってから聞かされました。知らなくてよかったです。63kg級に上げたばかりで、何の成績もないので、この勝利は自信になります。後がない状況で闘って勝てたということもです。
モンゴル戦でのフォール負けは、ビデオを見たら、自分のタックルではなく、いつもと違うタックルへ行って返されています。直していかなければならないところです。4月から自衛隊でレスリング専念し、リオデジャネイロを目指します。攻めるレスリングを徹底したいです」
■チームの勝利目指して気持ちで頑張れた…67kg級・飯島千晶(日大)
1回戦 ●[1-2(1-0,1-1L,0-1)]Kaur Navjot(インド)
2回戦 ○[2-1(1-3,2-0,2-1)]Megan Buydens(カナダ)
3回戦 ●[0-2(0-1=2:10,0-1)]Nasanburmaa Ochirbat(モンゴル)
3決戦 ○[フォール、2P1:51(3-0=2:03,F6-0)]Veronica Carlson(米国)
「初戦のインド戦は勝てる試合を落としてしまった。勝つべきところはしっかり勝ちたい。最後のアメリカ選手は、去年のゴールデン・グランプリ決勝大会の準決勝で負けた相手です。自分が負けたらチームの負けになるので、気持ちで負けないように頑張れたのが勝因だと思います。リベンジできてよかった。すごいプレッシャーの中での試合でしたが、この経験が今後に役立つと思います。
予選最後のモンゴル戦は地元のすごい声援の中での試合で、こうしたアウェーの中でもしっかり勝たなければならないと思いました。(試合の時に館内のアナウンスで「2010年アジア選手権チャンピオン」という紹介が再三流れていたことは)そうなんですか? 全然聞こえませんでした。今年は社会人(警視庁)になるので、全日本チャンピオンを目指してレスリングに集中します」
■コーチとチームメートの応援が力になった…72kg級・鈴木博恵(クリナップ)
1回戦 ○[2-0(3-0,TF7-0=1:39)]Jyoti Jyoti(インド)
2回戦 ○[2-0(2-1,3-0)]Leah Callahan(カナダ)
3回戦 ●[0-2(1-2,1-4)]Odonchimeg Badrakh(モンゴル)
3決戦 ○[フォール、2P0:59(1-0、F3-3)]Brittany Roberts(米国)
「最終日に全員が一丸となって闘い、3位となれたことはよかったと思います。(チームスコア3-3で上がった3位決定戦は)すごく緊張しましたが、コーチと選手の応援が伝わってきて力になりました。前の2試合がフォール勝ちだったので、自分も絶対に勝とうという気持ちになりました。全体を振り返ると、安易に相手の肩に手を回して一本背負いを受けてしまったり、不注意なことがありましたので、直していきたい」