2013.02.25

男子フリースタイル・ワールドカップ/監督・出場選手の声

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

■田南部力監督(警視庁) 「組み合わせを見た時は5位になる力はあると思ったので、7位は物足りなさも感じます。日本人は体力が武器だが、発揮されなかった。自分より強い外国選手に勝つには、疲れてからでも動ける体力をつけないといけない。この部分に関しては選手まかせでは達成できないので、コーチの厳しい指導が必要になると思う。コーチが引っぱっていかなければいけない。体力負けはコーチの責任だと思っています。

 技術に関して言えば、55、60、66kg級の3階級は世界との差は感じなかった。ひけを取っていないし、勝負できると思う。ここから経験を積んでさらに良くなると思う。本人達も、海外での自分のスタイルを確立できた大会だったと思う。今度は日本ではなく世界に目を向けて練習に取り組んでもらえたらと思う。

 ルールがこれから変わるということなので、それに対応した練習をしていかなければいけない。(イランでの大会について)イランではレスリングがメジャーなスポーツ。レスリングをやっている以上、経験した方がいい場所ですね。ここよりもすごい場所はない。選手もレスリングをしていることに誇りを持てたと思う。イランでの大会は少ないので、良い機会だった」


■55kg級・森下史崇(日体大)

1回戦 ●[0-2(0-5,0-2)]Hassan Farman Rahimi(イラン)
2回戦 ○[2-0(4-0,1-0)]Obenson Blanc(米国)
3回戦 ○[2-0(4-0,1-1)]Mehmed Zeyti Feraim(ブルガリア)
5回戦 ○[2-0(1-0,1-1)]Givi Davidovi(グルジア)
7決戦 ○[2-0(3-0,2-0)]Shokan Shingissov(カザフスタン)

 「ドイツでのジュニアのワールドカップに出場したことがありますが、今回の大会はレスリング大国での開催で、応援や人気がすごくて、文字通りの超満員で驚きました。いつもあんな雰囲気の中でレスリングをやっているイランの選手がうらやましくなりました。自分もこの経験ができて良かったと思います。

 結果を見ると4勝1敗ですが、1試合1試合振り返ってみたら、攻められなかったのが駄目でした。もっとアタックを増やしていかないと外国で勝てないと思います。外国人の独特なレスリングに合わせた対策をしておけば国内の試合にも使えると思う。今年は学生の大会も全力を尽くしますが、リオデジャネイロ・オリンピックに向けて、世界選手権を目指してやっていきます。まだ日本の一番とは言えないので、国内でしっかり勝って代表になれるようにしたいです」


■60kg級・前田翔吾(至学館大職)

1回戦 ●[0-2(0-2,0-1)]M. M. Esmaeilpoorjouybari(イラン)
2回戦 ○[2-0(1-0,1-0)]James Joseph Kennedy(米国)
3回戦 ○[2-0(6-0,6-0)]Stefan Ganchev Ivanov(ブルガリア)
5回戦 ○[2-1(0-1,4-3,5-5)]Malkhaz Kurdiani(グルジア)
7決戦 ○[2-0(2-1,1-0)]Sayatbek Okassov(カザフスタン)

 「理想としているものは出ず。反省が残りました。今回一番印象に残ったのは、3位決定戦と決勝です。イランはアメリカとは政治的にはあまり良くない関係ですが、勝てば拍手がおこり、大会中に理不尽なブーイングは一切なかったことです。スポーツのあるべき姿などもを思い、レスリングをやっていて良かったと誇らしい気持ちになりました。

 強豪5ヶ国と試合ができたのは、自分の人生にも大きなプラスになり、こんなに良い経験をできた遠征は初めてです。感謝しています。4月からはクリナップに入社して練習環境も変わります。自分の出身大学の近くに住みますので、先輩後輩と一緒にがんばります。

 しばらく海外の選手権大会に出ていないので、アジア選手権も出たいですし、世界選手権も出たいです。リオデジャネイロ・オリンピックまでに3度の世界選手権がありますが、米満先輩を見て、世界でコンスタントに成績を残すことがオリンピックでメダルを獲ることに必要だと思いましたので、すべての大会に出て、最低でも2つの大会でメダルを獲り、そのうちの1つは金メダルを目指します」


■66kg級・石田智嗣(警視庁)

1回戦 ●[0-2(1-2,1-1)]Mohammad Ali Yousefi Kamangar(イラン)
2回戦 ●[1-2(1-0,0-2,0-3)]Brent Harold Metcalf(米国)
3回戦 ○[2-0(1-0,4-0)]Nikolay Goshev Kurtev(ブルガリア)
5回戦 ○[2-1(0-1,2-0,1-0)]Malkhaz Zarkua(グルジア)
7決戦 ○[2-1(0-1,4-0,1-0)]Dauren Zhumagazyyev(カザフスタン)

 「各国のコーチがみな同じように『続けろ!』と言っていたのが印象的でした。練習してきたものを出し続けることが大切と感じました。続けるには体力もいるし、精神的忍耐力もいるし、そういう力をつけていかないとなと思いました。

 今まで味わったことのない大歓声の中で試合をして、こんなにもレスリングを応援してくれる人がいることを本当にうれしく思いました。生まれて初めて、自分がレスリング選手であることを誇りに、そして幸せに思いました。この経験を生かしてこれからがんばっていきたい。

 団体戦でなので『日本チーム』という感覚が強く、みな一緒で心強くマットに上がれました。一緒に闘ってくれた選手とサポートしていただいたコーチ、スタッフの皆さんに感謝しています」


■74kg級・高谷惣亮(ALSOK)

1回戦 ●[0-2(3-5,0-1)]Sadegh Saeed Goudarzi(イラン)
2回戦 ●[0-2(0-2,1-7)]Jordan Ernest Burroughs(米国)
3回戦 ●[不戦]Miroslav Stefanov Kirov(ブルガリア)
5回戦 ●[不戦]Jakob Makarashvili(グルジア)
7決戦 ●[不戦]Nurlan Bekzhanov(カザフスタン)

 「1試合目のイラン戦で7階級全員が負け、みな落ち込んでいる時、キャプテンとして、チームの雰囲気を次の試合に向けようと『気持ちを切り替えていこう!』と声をかけましたが、2試合目の開始15秒でけがをしてしまい、そのあとの試合には出られなくなりました。チームに貢献できず悲しいですし、試合したかったです。チームとして試合ができるチャンスをふいにしてしまいました。

 また必ず出たいので、出場権を取るために、世界選手権では上位入賞を狙います。今回のけが(右ひざじん帯損傷=全治3週間)を良い機会ととらえ、体力作りなどに励んでステップアップしたいです」


■84kg級・松本真也(警視庁)

1回戦 ●[0-2(0-4,0-6)]Ehsan Salman Amini(イラン)
2回戦 ●[1-2(2-1,0-1,0-2)]Phillip David Keddy(米国)
3回戦 ○[不戦] ----(ブルガリア)
5回戦 ●[0-2(1-2,4-5)]Nodar Egadze(グルジア)
7決戦 ●[0-2(0-1,0-3)]Aslan Kakhidze(カザフスタン)

 「いい所を見つけるのが難しかった。反省材料の多い大会でした。技術と言うよりも体力的に差があって、タックルに入っても切られて、逆に取られたり、足が止まって入られたりというのが目立ちました。ただ、アタックして、脚を触れれば入れる、という確信が持てたのは収穫でした。

 ワールドカップという大会に参加できた事は良かったです。国別団体戦で他国と戦うと言うのは『日本の代表として国のために勝利を』という思いで臨め、今までにない経験でした。だからこそ、自分の勝利で貢献できなかったことは、後輩達に申し訳ないです。チームとして闘ったことで、後輩達とは普段あまり話さないようなレスリングの話をしたり、アドバイスをもらえたりして新鮮でした」


■96kg級・山口剛(ブシロードクラブ)

1回戦 ●[フォール、1P(F0-3)]Amir Abbas Moradi(イラン)
2回戦 ●[0-2(0-7,0-3)]James Daniel Bergman(米国)
3回戦 ○[2-0(3-0,2-0)]Georgi Atanasov Sredkov(ブルガリア)
5回戦 ●[フォール、2P(0-2,F1-5)]Tedore Ebanoidze(グルジア)
7決戦 ○[フォール、3P(1-0,0-7,F3-1) ●  Seymon Semyonov(カザフスタン)

 「昨年のこの大会では1勝しかできなかったので、今年は2勝以上と思っていた。達成できてよかったです。昨年はまだ84kgの体重で96kg級に出ていましたが、96kg級に転向して、今年は片足タックルが通用するようになってきたと思いました。スタミナと力で負けてしまっていたので、勝負どころで勝負できなかった。世界の96kg級で戦える体力をつけます。

 レスリング大国のイランでの大会、決勝は満員の観客に大声援でした。日本でもこんな環境で試合できたらなぁと思いました。それには選手が一番頑張らなければと思うので、オリンピックから除外されないように、選手として頑張ります」


■120kg級・岡倫之(日大)

1回戦 ●[0-2(0-3,0-5)]Seyed Mohammadreza Azarshakib(イラン)
2回戦 ●[フォール、1P(F0-5)]Tervel Ivaylov Dlagnev(米国)
3回戦 ○[2-0(1-0,1-0)]Dragomir Vladev Stoychev(ブルガリア)
5回戦 ●[フォール、2P(1-1.F0-4)]Tornike Khidesheli(グルジア)
7決戦 ●[フォール、1P(F0-4) ○  Dmitriy Popov(カザフスタン)

「いつも通りできませんでした。国内では『1点取って守る』というのが自分のスタイルですが、今回は前へ前へと行きながら、狙いすぎてフォールされてしまった試合がありました。勝ちを狙うには安直すぎたと思いますが、経験という意味ではよかったと思います。外国の選手にも押し負けなかったし、差してからの勝負ができると分かりました。

 5試合の経験ができてよかったです。勝てたのがブルガリア戦だけだったので、次からは勝つ経験を積みたいです。シニアで1勝できたので、4月のアジア選手権に出場できることになれば、上位を目指せるようにがんばりたいです。

 ワールドカップ楽しい大会でした。イランの観衆から『オカ』コールが起こり、うれしかった。言葉が通じないので、心を通じさせるには、パフォーマンスで心をつなぐ事が大切だと思いました。パフォーマンスするためには勝たなければいけないので、頑張ります」