※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2月13日に東京・岸記念体育会館内で行われた国際オリンピック委員会(IOC)理事会の決めた五輪競技からの除外に関する報道陣と福田富昭会長らとの一問一答は下記の通り。
100人を超える報道陣を集めた会見
福田 IOCから明確な理由を示されていない。どういう手をうったらいいか分からない状況だ。放映権料、観客数、競技人口数、男女の比率、人気度など多くの要因があると思うが、それらがレスリングより低い競技もある。IOCの出した数字が正しいのかどうかという疑問もある。テコンドーと近代五種がうわさでは危ないと言われていた。この競技団体はIOC理事に対してロビー外交を必死に頑張ったようだ。(外された)思い当たる理由はそれしかない。そうであるなら、(復活へ向けて)この2つをしっかりやっていかなければならない」
――先週、スイスへ行かれたそうですが、IOCの理事会と関係があったのでしょうか。FILAとして、今回のIOC理事会に向けて何らかの働きかけはあったのでしょうか。
福田 先週。FILAの本部に行ってきましたが、(五輪競技からの除外という)話はまったく出なかった。ルール改正の話があり、見て面白いルールにしようと意見交換をした。きのう、第一報が入った段階ですぐにラファエル・マルティニティー会長に電話したら、会長もまったく知らず、その電話で知ったとのことで驚いていた。
――五輪競技に残るため、FILAとしての活動はしていなかったということか。
福田 やっていはいたが、それほど力は入れていなかった。地道な活動だった。
――IOC理事会にレスリング関係者はいないことについては、どのように考えていますか?
福田 韓国レスリング協会の前会長とマレーシアの1人がレスリング関係のIOC委員だが、理事はいない。理事はIOCが決めること。私たちがいくら動いても、簡単に決まることではない。オリンピック競技の国際連盟の会長は全員がIOCの理事になるべきだというのが私の持論だが、なぜか理事は15人しかいない。各国のオリンピック委員会の会長枠も15くらい。個人的な枠でIOC委員が110数名いる。確かにレスリングはIOCの中で立場が弱い。IOCが決めることで、私たちが口を出せる問題ではない。
――以前、グレコローマンを削除しろという話がIOCからあったはず。それにはどう対応したのか。
福田 15年ほど前、グレコローマンの削除問題が出たが、各スタイル10階級を8階級に減らすことで両スタイルを残すことで解決した。
――女子の階級増要求が裏目に出た可能性は?
福田 全く考えられない。2000年シドニー・オリンピックでは、IOCが女子を入れてもいいと言ったが、FILAが男子の階級を減らすわけにはいかないとして拒否したくらいだ。その後、女子入れる活動をやって女子の採用にこぎつけた。すべての競技で男女をやろうというのがIOCの方針。女子を3階級を増やして7階級にしてほしいという要求はしてきた。その要求が障害となってレスリングが中核競技に入れなかったという理屈はないと考えている。
■今月16~17日のFILA理事会で対応策を協議
――11日付けの協会のホームページに、五輪からの除外の可能性に言及した記事があったが、危機感は?
福田 危機感はが全くなかった、ということはない。どの競技でも危機感はあったはず。陸上、水泳、サッカーなどは別として、それ以外の競技団体はどこも危機感を持っている。それと同じ程度の危機感はあった。
高田 除外の可能性があることは認識していたが、25の競技に残れるだるう、と思っていた。除外の危機感が強ければ、もっとロビー活動をやっていた思う。日本のみならず、国際レスリング連盟も活動していた。今回は日本協会も世界連盟もうかつだった。こうした事態になった以上、5月の理事会までに最大限のロビー活動をし、9月の総会で残り1枠に入れるように頑張りたい。
13日のスポーツ紙は5紙がトップページで報じた
――事前の世界の主要メディアの情報では、近代五種かテコンドーか除外候補とされていた。突然レスリングが出てきたのは異常と思うが、気がつかなかったのは国際レスリング連盟の情報収集の面で油断か? それとも両者間の連携の悪さか?
福田 FILAのマルティニティー会長はIOC委員ではないが、IOCの会議にはいつも出席している。今回は理事会での決定だったので、情報が取れなかったのだと思う。理事同士のコミュニケーションまではつかめなかったとしても、仕方ない面はあったと思う。
――情報がない中でも、除外はないと思ったのは、第1回大会から実施されている競技という自負か?
福田 第1回大会から入っている根幹のスポーツだ、と自分たちで思っていて、そうした安心感はあったと思う。レスリングがなくなればオリンピックが変わってしまう、古代からのオリンピズムが変わってしまうだろう、という気持ちは否めない。何が起こるか分からない、という危機感はいい例になると思う。
――現役選手は、どんな行動を考えているか。
米満 東京でオリンピックがあるのなら、そこまでやろうと考えていた。(除外阻止へ)選手が行動できることは少ない。競技力を向上させることしかできないので、具体的な活動までは考えていない。
湯元 協会にボク達ができることを聞き、できることをやりたい。自分自身、小さい頃からオリンピックを目指してやってきただけに、一番ショックを受けているのは子供たちだと思う。現役の選手として、子供たちの夢がなくならないよう、何かをしたいという気持ちだ。
――男女比も一因とされていますが、FILAの副会長としてこの問題について改革したいことは?
福田 まず分析だ。何がどうして除外となったことを正確に知り、対策を練りたい。放映権料の問題なのか、男女比、競技人口、観客数なのか。ひとつずつ解決していきたい。日本だけではなく、各国のレスリング協会がIOCに対して働きかけないと取り戻せない。IOC委員、理事に対してもしっかりしたロビー活動をしてレスリングの強みをアピールしたい。2020年の大会は東京が立候補している。東京が開催を勝ち取り、レスリング選手が活躍する大会にしたい。