※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
大澤監督と樋口主将
55kg級の樋口黎主将は全試合に出場して全勝、しかも無失点と大車輪の活躍を見せた。「関東選抜は勝たなければならないと思っていたので、優勝できて一安心」と笑顔。だが、すぐに表情を引き締めて「内容がまだまだ未熟だった。ダメだったところを持ち帰って、全国大会までに直したいです」ときっぱり話した。
インターハイで22回の優勝を誇る霞ヶ浦だが、昨年の全国高校選抜大会は3回戦敗退。インターハイでは決勝までコマを進めたが、花咲徳栄(埼玉)に2-5で敗れ、全国制覇なしで終わったシーズンとなってしまった。この悔しさを、樋口主将はレギュラーメンバーとして身をもって経験している。
今季のチームのスローガンは「王座奪回」。年明けから日本一選手層が厚い日体大に出げいこに行き、午後は東洋大で練習するというハイレベルの一日2回練習を行いうなどしてチームを強化してきた。
重量級を支えた蛭田
しかし、大澤友博監督が「なんとか仕上がってきた」と手ごたえをつかんだ時、チームにインフルエンザがまん延するアクシデントに襲われた。風邪などによる体調不良者や、けが人を含めると、最大14選手が練習を休む状況にまで陥った。「回復したのは数日前という選手もいました」と、大会直前の課題は“選手をマットに立たせること”と、ハードルがかなり下がってしまっていた。
それは他の高校も同じだった。インフルエンザを中心とした冬特有の病気は関東の高校で同様に広まっており、今大会は棄権や計量失格の選手が相次いで全体で17選手が試合を欠場した。昨年、霞ヶ浦を破って、学校対抗戦で念願の初優勝を果たした花咲徳栄(埼玉)は、けが人が相次いで7人のメンバーをそろえられず、団体戦を闘えるぎりぎりの4人でエントリー。本来の力を発揮できず、準決勝で館林(群馬)に敗れる波乱もあった。
大澤監督は「インフルエンザなどでチームが仕上げられなかったのは霞ヶ浦に限ったことではなかった」と振り返った。確かに、どのチームも本来の力を発揮できない最悪の状況だった。霞ヶ浦は、チームのエースを含む7階級の選手を全部そろえるだけの力は残っていたことが、今大会で優勝した最大の要因だったと言えよう。
■インターハイまでに改善が必須!
クリンチにやられることの多かった選手。全国大会までの課題だ
「今大会は、ラスト7秒でポイントを奪われたり、クリンチでミスしたりすることが2回ありました。ミスをするチームは勝利の女神に見放されてしまうのです。粘りというのが今のチームにはないんです」と明確な課題を挙げた。
昨年から正規メンバーとして団体戦に出場してきたのは55kg級のインターハイ王者の樋口のみ。そのほかは新チームとなってからメンバーに入った選手ばかり。だからこそ伸びしろがあるという見方もできる。
3月の全国選抜大会まであと2か月弱。これまで、わずか数ヶ月でチームを生まれ変わらせることを何度もやってきた大澤監督は、今季のチームをどう改革していくのだろうか―。