※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
近年のキッズ・レスリングの隆盛は、レスリングに打ち込む子供の姿を見るうちに自らもシングレットを着て試合に出るようになった母親をも生み出している。全日本マスターズ選手権の女子B級で優勝した三好藍子さん(香川・綾川クラブ)も、その一人だ。
1回戦は不戦勝だったが、決勝を見事に勝利。タックルで相手を倒し、フォールの体勢に追い込んだあとは、レフェリーに「(肩が)ついてる! ついてる!」とアピールするなど、闘争心たっぷりの試合を展開した。
「去年は初戦で負けてしまいまして…。今回は勝ててよかったです」と、ホットした表情を浮かべた三好さん。昨年負けた相手というのは、51kg級で活躍し、2003年にはアジア・チャンピオンに輝いたこともある中京女大(現至学館大)卒の服部担子さん(SKアカデミー)。今年も初戦の相手が服部さんだった。
しかし服部さんが棄権。「緊張がスーと取れて、伸び伸びできました」とのこと。旺盛な闘争心を指摘されると、「ちょっと恥ずかしいですね」と苦笑いしながらも満足そうな表情。1試合では物足りないようで、「もう少し試合がしたかった」とのこと。
先制のタックルとフォール(赤が三好さん)
大会出場は昨年に続いてだが、マットの上で体を動かしたのは6年前になるという。当時、小学校1年と2年だった2人の男の子に「手本を見せよう」としてマットに上がった。練習していくうちにレスリングの面白さを感じ、「負けないぞ」といった感情も出てきたという。
現在、子供は小学校6年と中学1年。親よりも強くなっているし、親離れしていく年代。そこで、今度は自身の闘いとして試合出場に踏み切った。スポーツは中学時代にバドミントンをやっていただけ。表彰台の一番上に上るのは初めてのことだった。「気持ちよかったです。子供にお土産ができました」とうれしそうに笑った。
レスリングは「きついけど、楽しい」という。具体的には「相手をパーッと制した時が気持ちいい」そうで、夫の理解があれば、「来年も出たいです」。2試合も3試合もできるように、“母親レスラーの輪”が広がってほしいところだ。