2013.01.10

イランに女子解禁の可能性が浮上…2015年世界選手権開催に立候補

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 女子の試合開催を認めていなかったイランに、女子解禁の可能性が出てきた。国際レスリング連盟(FILA)のホームページのカレンダーに、リオデジャネイロ五輪の第1次予選となることが予想される2015年世界選手権の開催地の立候補に、最近になってイラン(テヘラン)が加わった。

 FILAは現在、シニア、ジュニア、カデットとも世界選手権と大陸選手権は3スタイルの実施を開催条件としている。女子の試合を認めていないイランは、世界選手権は2002年の男子フリースタイル、アジア選手権は2004年の男子フリースタイルを最後に開催していない。

2011年9月の世界選手権(トルコ・イスタンブール)の期間中に行われた記者会見(右写真)で、イランの記者が「イランは世界選手権の開催を熱望している」と訴えたが、FILAのラファエル・マルティニティー会長(スイス)は「何百回も言っている。3スタイルの開催でなければ、世界選手権の開催は認めない」と突っぱねた。

 同会長は、オリンピックの女子7階級の実施へ向け、イランが女子を解禁することを熱望。肌が露出しないスピードスケーターのようなシングレットを認めてでも、女子の実施を求める姿勢を打ち出し、交渉することを明らかにしていた(クリック)。

 まだ詳細は分かっていないものの、世界選手権にイランの立候補が認められた事実は、イランが女子解禁に踏み切る可能性が出てきたと言えよう。

 同年の世界選手権は9月7~13日に予定され、テヘランのほか、ソチ(ロシア)、ラスベガス(米国)、パナマシティー(パナマ)、ニューデリー(インド)が立候補している(2014年の世界選手権はウズベキスタン・タシュケント)。


 【解説】厳格なイスラム教国家であるイランは、公の場で女性が肌を露出することは禁止。スポーツも制限されており、、日本から送られてくる新聞は検閲を受け、女子アスリートの写真の肌の部分は真っ黒に塗られていたという。

 サッカーとレスリングは、やることのみならず観戦も禁止されていた。1989年の男女同時開催の世界選手権(スイス・マルティニー)では、「女性と同じマットで試合はできない」として全選手が棄権した。開会式では、「女性に先導されて行進はできない」としてプラカード嬢を拒否し、男性に変えてもらうことなどが普通だった。

ロンドン五輪で、素顔で自国選手を熱狂的に応援するイラン女性

女性の社会進出が進みつつある近年は、女性のスポーツ振興にも力を入れ始め、サッカーでは2005年の西アジア大会に出場するため初めてイラン代表チームが結成された(ただし、肌を隠す服装が規定違反だとしてロンドン五輪予選は失格となった。現在、国際サッカー連盟との間で協議中)。レスリングは、いまだに観戦も認められていない。

 しかし時代は流れている。1999年の男女同時開催のアジア選手権(ウズベキスタン)では、女子と同じマットで練習・試合をやるなど軟化し、FILAの女性役員や女性記者は会場への立ち入りができるようになった。2009年の世界選手権(デンマーク)で吉田沙保里選手が2度の五輪を含めて世界9連覇した時は、ガッツポーズの写真(当然、肩、腕、脚などが露出)がそのまま掲載されるなど変化している(吉田選手の強さがずば抜けているため、例外だったという声もあるが…)。

 なお、イスラム教国家と言われる国で女子レスリング選手がいないのはイランやサウジアラビアなどで、トルコやエジプトでは普通に行われている。2006年アジア大会が行われたカタールでは、同国から女子の出場はなかったものの、普通のシングレットで女子の試合が行われている。