※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
■男子グレコローマン55kg級決勝の第2ピリオド
(監修=斎藤修・日本協会審判委員長)
当初の判定は、パーテールポジションの下側となっていた赤が、青の攻撃をしのいで反撃。2度、押さえたとして、2点+2点と解釈され、赤の4-0と判定されたシーンです。青のチャレンジによりビデオ・チェックの結果、青の1-0と変更されたシーンです。
--------------
(1)最初の段階で下になっていた赤が、立ち上がり反撃を試みます(イニシャル=攻撃を仕掛けること=は赤)。しかし、青の動きにカットされ動きが止まります。
--------------
(2)赤の動きが止まると同時に、青が俵返しの組み手で相手の体を回しました(イニシャルは青。ここから先は青の攻撃によるアクション)。
--------------
(3)攻撃を仕掛けた青の背中は完全にマットを向いていますが、赤の背中はマットに向くことはありませんでした。青の背中がマットに向いたのは、通称「リスク・レスリング」で、技を仕掛けるためのアクションであり、失点にはなりません。
また、この動きの中で赤は相手を押さえこむなどのアクションはまったくありません。したがって、両者ともポイントはありません。
--------------
(4)その後、青が俵返しを試み、ブリッジをして投げました。赤は背中をマットに向けることはありませんでしたが、技を完全に受けているので、青の「コレクトホールド」となり、第41条の規定により、青に1ポイントが入ります。
当初の判定では、赤が押さえたということで、赤に2点が入ったものですが、ビデオチェックの結果、赤が押さえたアクションはありませんでした。したがって、赤に2点が入ることはありません。
第41条 スタンドレスリングもしくはパーテールレスリングで、「コレクトホールド」をかけ、相手をデンジャーポジションに持ち込めなかったレスラーに(1点が与えられる)。 (注)コレクトホールド=攻撃側の技術展開中に起こる「効果的なホールド」を、その定義とする。攻撃側の技術展開において、その「ホールド」が効果的に進展しているにもかかわらず、相手がデンジャーポジションに着地するにいたらず、「腹這い状態」もしくは「両手で支える状態」に終結する局面をコレクトホールドという。 |
12月4日掲載の【ルール確認】に出てきますが、一連の流れの中で、青の両肩が同時にマットにつくシーンがあれば、赤が何のアクションも起こしていなくても、青は2点を失います。しかし、そうしたシーンはありません。
以上の理由により、青の1-0という判定となりました。