※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)
決勝で前年王者の荒木田と闘う岡
岡の2012年は、6月の全日本選抜選手権で初優勝したものの、8月の全日本学生選手権や11月の全日本大学選手権で優勝を逃してしまった。さらに、世界の壁。そのため、「きつい1年だった」と振り返る。
けがに泣かされたのは自分の中では理由にしたくなかった。だから、「全日本選手権で優勝することが日本で一番になることだ」と自分自身に言い聞かせ、練習に励んだ。そして、過去に一度も勝ったことがない荒木田進謙(警視庁警察学校)に決勝で勝利し、全日本選手権初優勝を果たした。
■荒木田戦の壁を越えたものの、自分を戒める
日大の富山英明監督は「差しもいいし、動きもいい。だけど、荒木田はがぶるのがうまい選手だから、自分から動いて周りこんで攻めろ」という指示を出したという。11月の全日本大学選手権では田中哲矢(大東大)に準々決勝で敗れている。今大会も準々決勝で対戦することが分かった時点で、「負けたら、正月はないと思え」と檄を飛ばした。
2回連続同じ相手に負けるわけにはいかないという悲壮感、日本で一番になるという決意、それと積み重ねた練習の成果が実り、岡はついに日本一を制した。
そんな岡の2013年の目標は対世界だ。冒頭の言葉にもあるように、9月の世界ジュニア選手権(タイ)で、培ってきた自信を粉々に打ち砕かれた。そのため、帰国後は好きなウエートトレーニングの時間をさらに増やした。それであってもパワーの差は埋められないかもしれない。動きとスピードで外国選手を翻ろうし、勝利につなげたいと考えている。
荒木田を破り、雄たけびをあげる岡
富山監督も認めるディフェンスに関しては、自分でもできていると感じている。当面の課題は、「取れるところで点を取れないことを補いたい」という。決勝の荒木田戦を振り、「第1ピリオドのポイントは狙って取れましたが、第2ピリオドのポイントは偶然でした。チャンスの場面ではもっと攻めるように心掛けたいです」と、勝ってもなお自分を戒(いまし)めた。
■恵まれた体に生んでくれた親に感謝
群馬出身の岡は中学時代、柔道部に所属していた。その頃から人並み以上の体格。周囲の勧めもあって、高校ではレスリング部を選択した。「恵まれた体をしている」と少年時代から言われ続けてきた岡は、「産んでくれ、育ててくれた親に感謝しています」と語る。
その親に感謝するとともに、喜んでもらうためにも、今は「うらやましい」と思っているオリンピックの憧れの舞台に立つことを、夢物語で終わらせるわけにはいかない!