2012.12.12

【西日本学生秋季リーグ戦・特集】2年間の出場停止処分を乗り越え、関大が一部リーグに復帰

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=樋口郁夫)

2010年春に起きた部員の不祥事により、約2年間の出場停止処分を受けた関大が、西日本秋季学生リーグ戦の二部リーグで優勝。来季の一部リーグ昇格を決めた。(右写真)

 処分が解除されたのは今春で、「2年間」と言う出場停止は、正確な記録はないが、レスリング界の処分では最長の長さと思われる。オリンピック選手も輩出した(東京五輪金メダリスト、市口政光)伝統大学が、長い謹慎を乗り越え新たな飛躍を目指す。

 安田忠典監督は試合後、会場に駆けつけてくれたOBに深々と頭を下げ、苦しかった日々を支えてくれたことを感謝。優勝の喜びを問われると、「周囲にご迷惑をおかけしてきました。喜ぶよりも、まずお詫びしたい。また仲間に加えてもらい、闘える場を与えてもらったことに感謝します」と話し、笑顔はなかった。

■大学、OB、保護者、そして選手の総力を結集しての復活

 大学は事件を深刻に受け止めた。「廃部」という声すらあがった中、講演会や読書会、ボランティア活動等の更生プログラムを課して再起を求めた。スタッフを一新し、最後は学生が大学職員の前でプレゼンテーションして部の更生を誓い、復帰が認められた。

二部優勝のあとにも十分なミーティングを行い、学生スポーツのあり方を教える安田監督

 監督は関大の教員だが、勤務地が道場と別の校舎にあるため、常に参加することはできない。それを補ってくれたのがOBであり、保護者だった。「クラブを思うOBの愛情と子供を思う親の愛情があってこそ、ここまでくることができました」。大学、OB、保護者、そしてレスリングをやりたいという選手の総力を結集しての復活だった。

 安田監督は「新しいチームとして再スタートしました。選手は主体性を持って、本当によく練習していました。その結果が優勝だと思います」。選手の頑張りを特に感じることができたのが、春季に負けた九州共立大との一戦。選手は相手を徹底的に研究し、「この相手を絶対に倒す」という意識を前面に出して練習を積んできたという。

 半年間の成果を試す試合は、春季2-5だった結果が4-3での勝利へ変わった。選手の努力が並大抵のものでなかったことの証明だ。

■2年間、新人の補強もできず! この試練を乗り越えられるか

 今大会の一部リーグは、二部から再昇格したばかりの近大が3位に入賞した。来季の関大も勢いに乗って一気に3位、あるいは優勝争いに加わりたいところだが、2年間の活動停止処分の間は推薦で選手を獲得することができず、選手の補強が行われなかった(現在いる1、2年生は大学に入ってからレスリングを始めた選手)。

5回戦の大体大戦。66kg級の倉谷晋平(3年)が勝って優勝を決めた

 「簡単に勝たせてもらえないことは分かっています」と、厳しい闘いとなることは覚悟している。厳しい試練を乗り越えただけに、この試練も乗り越え、真の復活を果たしてほしい。

 OB会の倉橋裕会長は「春のリーグ戦では結果を出せませんでしたが、この半年間、選手たちは熱心に練習に励んでくれました。目標達成できてうれしく思います」と、時に詰まらせて辛かった日々を振り返った。

 「(謹慎期間は)学生はボランティア活動などの更生プログラムに取り組み、処分解除へ向けて必死にやってくれた。レスリングと違った試練を乗り越え、精神的にたくましくなったと思います」と続け、「来年はまた厳しい1年になると思いますが、頑張ってほしい」と選手の奮起を期待した。