※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
全国中学選抜選手権の女子44kg級は、昨年まで大阪・吹田市民教室に所属していた南條早映(JOCエリートアカデミー=右写真)と、同教室所属で1年先輩の澤葉菜子の“吹田決戦”となり、南條が競り勝って優勝。澤に初めて勝つとともに、アカデミーに進んでから初の全国タイトルを獲得した。
キッズのエリートを集めて育てる同アカデミーだが、1年生でこの大会または6月の全国中学生選手権でチャンピオンに輝いた女子選手は初めてのこと。同アカデミーの歴史に残る名前を刻んだ。
■「体力で勝った」という勝ち方に不満が残った
しかし、優勝後の南條は「まだまだです。満足できません。決勝は、(4月のクイーンズカップで負けた)リベンジできたのはよかったのですが、タックルも何もいけず、気持ちと体力だけで勝ったようなものですから…」と喜びはなし。第1ピリオドを取られながらの逆転勝利は褒められる内容と思われるが、「ちゃんとしたレスリング、タックルを使って勝った方がうれしい。体力でまさって勝つのもいいのですけど、得意な技で勝ちたかった」と続けた。
第3ピリオドはラスト30秒くらいに貴重な1点を取り、そのあと横崩しでポイントを重ねて7-0のテクニカルフォール勝ち。大量ポイントを取ることできる技量も目を光るものがあるが、「クラッチもゆるゆるで不完全。相手が(終盤に1点を取られたことで)あきらめていたみたいだったから、かかっただけでしょう」と冷静に分析。自分の技におごることがない。
決勝で闘う南條早映
また、「体力で勝った」というのも、間違った勝ち方ではない。アカデミーに入ってから、毎日の朝練習で必死の走りこみなどの体力トレーニングをしてきており、「体力はつきました」と自負している。気持ちと体力が順調についているのだから、試合で使える技が加われば、さらに実力を伸ばしていくだろう。
■親元を離れ、家のありがたさを実感
JOCアカデミーの他のクラブにない強みは、全日本チームが合宿する東京・味の素トレーニングセンターで練習しており、オリンピック代表選手を身近に意識できること。南條も、身近にいる選手がオリンピックで活躍する姿を見て、「自分も活躍したい」と思ったという。それどころか、「追い抜きたい」とまで思ったというから、上を目指す意識は高いと言えるだろう。
親元を離れて7ヶ月が経つ。「寂しくないです。たまに帰ることで、家のありがたみを感じることができました」と親への感謝の気持ちを持ち、人間的にも成長した南條。当面目標とする選手は「(アカデミーの先輩の)宮原優さんのような優しくて強い先輩」-。