※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
初戦(2回戦)を順調に勝った佐長だが…。セコンドは木村監督
実は今年夏まで大阪に住んでおり、吹田市民教室の選手として7月の全国大会に出場。6年生39kg級で優勝し、4連覇を達成した強豪だ。父の転勤で神奈川県に引っ越し、秋から専大のコーチが主宰するチームに参加するようになった。“里帰り大会”に張り切っていたと思われるが、3回戦で延長の末、井勢珠維(倉吉クラブ)に敗れる不覚。故郷に錦を飾れなかった。
悔しさのため取材を断った本人に代わり、専大のコーチでもある木村元彦監督は「タックルに入るスピードやパワーなど、光るものがあります。ただ、攻め続ける体力が足りないことと、組み手の技術が甘いですね」と敗因を分析。日本協会の佐藤満・強化委員長(専大コーチ=1988年ソウル五輪金メダリスト)の技術を受け継いでいる指導者の目には、全国V4と言えどもマスターすべき技術は少なくないようで、「これから細かい技術を教えていけば、結果は出せると思います」と期待した。
■これからは「勝つためのレスリング」にも力が入る
同クラブは2009年にスタート(クリック)。五輪チャンピオンの教えを受け継いだ4人のコーチがキッズ選手を指導している。とはいえ、ハイレベルの技術ばかりを教えているわけではなく、むしろ遊びの中で体力づくりをすることに主眼を置いていたチーム。サッカーやバスケットボールをやっていて、その体力づくりのために通ってくる子であろうが、親がマット運動をできるようにさせたくて通わせている幼稚園児も受け入れている。
黒星のあと、木村監督(背中)から技術指導を受ける佐長
もっとも、クラブが大きくなれば、試合で勝ちたい選手が出てくるのが自然の流れ(現在、部員は86人)。そんな選手はしっかりサポートする。全国チャンピオンの加入で選手は刺激されているそうで、木村監督は「これからは勝つためのレスリングの比率が多くなるでしょう。大学選手に練習相手をしてもらえますので、楽しみです」と言う。
底辺の拡大という所期の目的は達成しつつある同クラブ。全国王者の加入で新たな方向へ転換する時期に来た感があるが、木村監督は「4人のコーチが向いている方向は一緒ですから」と自信を見せた。今後の発展が期待される。