※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
ポーランドで行われたグラップリングとアマチュアMMAの世界選手権に出場した日本選手団が11月20日、成田空港着のアエロフロート機で帰国した。今大会は、グラップリングの両スタイル62kg級に出場した水洗裕一郎(X-TREME柔術アカデミー=右写真)が、Gi(道着あり)で2位、No-Gi(道着なし)で3位に入って2つのメダルを獲得したものの、それ以外は全敗。2010年世界王者の久能孝徳(チーム太田章)ですら3戦全敗で、世界の壁を痛感した結果に終わった。
鎌賀秀夫監督(日本格闘競技連盟事務局長)は「他の国のレベルアップを感じました。日本は完全に遅れてしまいました。組織をしっかりして選手育成に本腰を入れなければなりません」と危機感を口にした。
これまでのグラップリングは関節技の取り合いが主で、レスリング経験者より柔術経験者の方が有利かな、と思われた。今大会は、試合開始後にタックルでテークダウンを取ってポイントを奪い、試合を優位に進める傾向が顕著にあり、「レスリング力が必要だ」というふうに変わってきたという。今後の練習では、レスリング・トップ選手とのレスリング練習の必要性もあるようだ。
大会出場の労をねぎらう鎌賀監督(右から3人目)
白井正良コーチ(福井クラブ)は、これまであいまいな部分もあったルールが、過去4度の世界選手権開催によって「確立してきた」と言う。「ルールにそった勝ち方を身につけさせていきたい」と振り返った。
鎌賀監督は、初めて実施されたアマチュアMMAを「ヨーロッパではもう何大会かやっているので、差があった」と分析。1日で決勝までやるのはかなりハードで、「それに耐えられる肉体と精神力の選手を育てないとならない」と話した。
UFCやM-1といったプロの総合格闘技団体がアマチュアの国際組織を結成するという動きもあり、国際レスリング連盟(FILA)はその対抗としてアマチュアMMAの振興にこれまで以上に力を入れるという。
■グラップリング両スタイル62kg級・水洗裕一郎(2位と3位=X-TREME柔術アカデミー)「こうした機会を与えていただき、協会の方々に感謝したいと思います。日の丸をつけて闘うということの重みを感じて闘いました。どの試合も一本を狙いにいきましたが、この姿勢が好成績につながったのかな、と思いました。ポイントを取りに行きつつ一本を狙うという姿勢でやっていけば、通じるかな、と思いました。外国選手には日本では感じないようなパワーを感じましたし、技術的にはヨーロッパ選手のレベルの高さを感じました。ルールを含めて細かい点を確認して、もう一度挑戦したい」
■グラップリングNo-Gi71kg級・寺本大輔(社会福祉法人朋光会)「1回戦で3-4で負けてしまいました。勝てる試合だったとは思いますが、負けてしまったのは力不足です。課題と自信にしていいことが明確に分かってきました。他の選手を見ても、寝技に関しては、劣っていることはなかったですけど、スタンドの状態、つまりレスリングの闘いでしっかりポイントを取らないと、判定にもつれた時に勝てません。いい試合をすることが必要なプロと違い、アマチュアは結果を出さなければなりませんから、しっかりポイントを取って勝つ試合をしないとなりません。外国選手は背中の筋肉がすごいでした。服を来ていた時は感じませんでしたが、裸になった時にすごさを感じました筋力アップと、4試合を勝ち抜く体力をつけたい」
■グラップリング両スタイル92kg級・久能孝徳(チーム太田章)「大会のレベルアップのほか、今までにない大会の雰囲気を感じました。技術的に粗い選手がほとんどいなくなった。レスリング力が相当向上しているので、私のように寝技で決めていく選手は、最初に立ち技でポイントを取られてしまいます。この適応ができなかったのが反省点です。柔術やサンボから来た選手が多いようでしたが、相当高いレスリングの技術があった選手が多かったように感じました」
■アマチュアMMA66kg級・田中千久(パラエストラ町田)「1試合目でかなりパンチを受け、2試合目は頭がボーとしていましたが、日本代表として頑張りました。でも、そこまででした。技術も体力も外国選手が一回り上だと感じました。私は挑戦という感じでしたが、外国選手は試合に勝つための闘いに徹していました。気持ちも強かったです。勝つための練習を積み、また挑戦したいです」