※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)
解散式であいさつする松浪団長
団長として同行した日本協会副会長の松浪健四郎・同大学理事長は解散式で「歴史的遠征になった。一生懸命やってくれた選手達に敬意を表します。スポーツマンは世界平和の使者でなければならない。将来についてもどんな貢献ができるか考え、勉学に励んで欲しい」と話した。
現地ではサッカー、柔道、レスリングで朝鮮体育大学の選手との練習と親善試合が行われた。初日に行われたサッカーは金日成スタジアムで開催され、4万人もの観衆が集まった。レスリングと柔道の選手もその試合を観戦。練習と試合以外は街や歴史博物館、金日成の生家などの見学もした。
■北朝鮮選手のパワーの前に交流試合は1勝7敗
レスリングの親善試合は日程最終日の15日に行われ、柔道と同じく平壌体育館で行われた。当初は観客400人程度と見込んでいたそうだが、大幅に増えて4000人とになり、選手達は今まで経験した事のない大観衆の中での試合となった。8月のロンドン五輪代表のヤン・キョンイル(男子フリースタイル55kg級)とリ・ヨンミョン(60kg)も観戦にきていたという。
当日は午前中に合同練習、午後に試合のスケジュール。北朝鮮側はナショナルレベルの選手は参加せず、朝鮮体育大学の選手との対戦となった。チャレンジなしなどの変則ルールで、8人(フリースタイル5人、グレコローマン2人、女子1人)の団体戦。計量はなく、練習試合の形式だが、日体大勢は74kgの杉本京介が勝っただけの1勝7敗と惨敗した。
レスリング選手団
コーチ的な立場で同行したロンドン五輪代表の湯元健一選手(ALSOK)は「いい練習ができました。練習も試合も、やっぱり体が強いなと思いました。国際経験の少ない選手達はタックルに行ってもすぐ返されてしまう。(今年の全日本学生選手権55kgチャンピオンで、9月の世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得した)森下史崇もやられてしまったのは残念でした。アウェーで相手の観客も多かったので、雰囲気にのまれてしまった面はあると思います」と話した。
■体制が変わり、スポーツに力を入れてくる北朝鮮
予定されていた朝鮮体育大学の視察は校舎の改築中でかなわなかったが、訪問は日体大側の発案だったにもかかわらず手厚い歓迎を受けたそうだ。行動の制限があったものの、ホテルから日本への固定電話の通話も可能で、街の写真を撮ることもできた。松本監督も、湯元選手も「普通の国でした。食事もおいしく、困った事は何もなかったです」と口を揃えた。
北朝鮮のスポーツへの取り組みは、金正恩第一書記の指導により、今月4日に発足した国家体育指導者委員会、春成沢(チャン・ソンテク)委員長の新体制になり、これまで以上に力を入れていくもよう。交流を定期的に行いたいという申し入れもあったという。
日体大の谷釜了正(たにがま・りょうしょう)学長は「私たち体育大学としても、2020年東京五輪の招致を願っている。そのための運動には積極的に関わっていきたい。大学のミッションとしても、国際平和の実現に寄与することを掲げているので、歩を進めていきたい」と話した。