2012.10.28

がんを克服して五輪王者に輝いたジェフリー・ブラトニック氏(米国=55)が死去

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 がんを克服して1984年ロサンゼルス五輪のグレコローマン100kg以上級で優勝したジェフリー・ブラトニック氏(米国)が10月24日、心臓手術後の合併症で死去した。55歳。

 ブラトニック氏は1980年モスクワ五輪出場を米国の不参加で逃したあと、自国での五輪出場に燃えていた。1982年、がんの一種であり、悪質の場合は短期間で死亡するボジキン病(悪性リンパ肉芽腫)であることが判明。すい臓の切除手術と放射線治療を行い、強い意志のもとで病気と闘った。

 1年後に体は回復。医師はレスリングを断念するよう忠告したが、「レスリングこそわが人生」と練習を再開し、ロサンゼルス五輪の代表へ。決勝でトーマス・ヨハンソン(スウェーデン)を破って金メダルを獲得すると、大粒の涙を流し、マットにひざまずいて神に感謝。

 「私は失意のどん底から立ち直った。病気には絶対に負けては駄目だ。病人になりきってしまっては終わりだ。私は目標を失わなかった」と話し、米国スポーツ界のヒーローとして称賛された。日本の新聞でも大きく取り上げられた。

 引退後はスポーツコメンテーターなどで活躍し、大相撲や総合格闘技UFC日本大会のレポートで来日したこともあった。