※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
応援席から試合を観戦する村上ドクター。左はクリナップの今村浩之監督
日本代表チームがお世話になっている中嶋耕平ドクターの順天堂大学時代の同級生で、現在は都内の2つの病院に勤務している形成外科医。3年くらい前に中嶋氏に誘われ、「スポーツが好きでしたから」と、二つ返事でスポーツ医科学委員のメンバーへ。学生時代はスキーを、現在ではトライアスロンをやって大会出場もこなす根っからのスポーツウーマンでもある。
中嶋氏は「協会に女性のドクターがいなかった。女子チームには、やはり女性ドクターが必要だと思った。彼女ならスポーツ好きだし、やってくれると思った」と“スカウト”のいきさつを説明する。これまでは、国内の大会に医事担当として参加するなどで協会の活動に携わっていた。
今回、初めて海外遠征に同行。「選手の内側が分かって新しい発見が多かったです。食事や練習など、こうやって調整するんだな、ということが実際に分かりました」と言う。7選手中5選手が初出場と若いチームだが、選手の健康管理への意識は「高いと思います」と、日本代表選手にふさわしい自覚を評価した。
■世界トップ選手の気迫に驚き
形成外科が専門だが、病院で勤務していると患者から頭痛や発熱などを訴えられることが多く、その度に対応しているので、突発的な事態への対処が“専門外”という意識はない。また、レスリング選手が大会前に特に気をつけなければならないのが皮膚病。形成外科は、体の表面の病気(体表先天異常、外傷や瘢痕、あざや皮膚腫瘍)に対して外科的治療を行うところで、形成外科医は皮膚に関しても詳しい 。チームドクターには適任と言えよう。
それでも「もっと勉強して経験を積み、選手ために尽くしたい」と話す。レスリング選手の健康管理については、「減量のあるスポーツなので、体をこわさないでほしいです」と要望する。
チームメンバーとともに。中列右端が村上ドクター
「やってみたいという気持ちは?」という問いには、しばらく考えたあと、「小さな頃からやっていないとダメなのかな、と思います」。トライアスロンで鍛えている体力をもってしても、今からマットへ、というわけにはいかないようだ。
中嶋氏は「遠征に同行するチームドクターは、行った先の境遇に応じて対処しなければならないので、国内でシミュレーションをすることができない」と説明。海外初参加だった今回は、「どうだったかな?」と気を遣う。今後、発展途上の国へ行くことがあれば、戸惑うことも多くなるだろうが、多くの経験を積み、「協会の中心的な存在になってほしい」とエールをおくる。
医師、トライアスロンと公私ともに充実しているところに、世界一を目指すチームへの帯同という機会を得ることができ、充実度が増しそうな村上さん。女子チームを力強く支えてくれることが期待される。