2012.10.08

【ぎふ清流国体・特集】“高谷効果”で京都勢が3階級制覇!…少年フリースタイル

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

優勝しガッツポーズの高谷

(文・撮影=保高幸子)

 「ぎふ清流国体」の少年フリースタイルの部は、60kg級の伊藤和真(網野高校)、66kg級の高谷大地(網野高校)、74kg級の浅井翼(京都八幡)の京都勢が3階級を制覇。底力を見せ、昨年に続いて京都の総合3位を成し遂げた。

■網野高主将の責任を果たす優勝…高谷大地

 高谷大地はロンドン五輪に出場した高谷惣亮(ALSOK)の弟。冬に骨折し、3月の全国高校選抜大会に出られず、その時点で目標の高校三冠王を果たせないことになった。その悔しさをばねにインターハイは勝ったが、今大会は「チャンピオンとして負けるわけにはいかない」というプレッシャーを伴うことになった。

 「やりにくかった」という高谷は、決勝の第1ピリオドを4-0で取ったが、第2ピリオド、相手に持ち上げられるピンチ。「以前、持ち上げで5点を奪われて負けた試合の記憶がよみがえった」というが、焦らずに1失点でおさえ、そのままグラウンドの攻防でビッグポイントを獲得してこのピリオドも奪取。見事な勝利だった。

 「京都で団結して勝った。僕だけで勝ったんじゃない。『京都は強い!』というところを見せたかった」と、網野高のキャプテンとしての責任を果たした優勝でもあった。

■三冠王を目指すプレッシャーを乗り越え快挙…伊藤和真

 同高のチームメートの60kg級の伊藤和真は、3月の全国高校選抜大会、8月のインターハイ、今大会と三冠王を達成した。伊藤は、周りからの勝って当然という期待や三冠がかかったプレッシャーに、「初戦から足が動かず、決勝の第1ピリオドまで焦りがありました」と振り返る。

 決勝の紺野孝太(富山・富山一)は何度もやっている相手というやりにくさもあった。しかし、第1ピリオドは危ない場面もあったものの、第2ピリオドはタックルを決め、ピリオドスコア2-0のストレート勝ち。その原動力となったのが、高谷の存在でもあった。

 三冠を達成することができない高谷の思いも背負って1年間を闘った。また、国体はいわゆる「団体戦」であり、「1人で闘うよりもみんなのために勝ちたいという気持ちが強くなります。高校最後の試合なので納得の行く試合をしよう」と奮起させたようだ。納得のいく試合はできなかったという伊藤だが、三冠達成に文句のある人はいないだろう。

■今年2戦2敗の相手に勝って優勝…浅井翼

 74kg級は京都の総合3位がかかった試合となった。浅井翼(京都八幡)の決勝の相手は白井勝太(東京・帝京高校)。今年2度闘って2度負けている相手。「これまでの試合の傾向から対策を立てて、白井選手だけに照準を絞ってきました」と浅井。本人は知らなかったが、3位の京都と4位の東京の総合順位の点差は1点。この試合の勝者が白井だったら、京都の総合順位は東京といれかわり、4位だった。

優勝を決めセコンドの父に抱きついた浅井翼

 「京都の総合3位に貢献できてうれしい。白井選手のタックルを切っただけでなく、自分の得意のローシングルが決まったこともよかったです。低く構えて崩して、迷いなく入れたからだと思います」と満足いく試合だった。3度目の正直でライバルを打ち破っての国体王者。

 京都八幡高の監督で父親の浅井努さんを尊敬しているという浅井は、勝利の雄叫びをあげたあと、父親の元に駆け寄って抱きついた。親子で勝ち取った勝利だった。また、高校は違っても練習仲間である高谷と伊藤の応援の声もあっただけではなく、高谷惣亮がいつも弟のように応援してくれたという。「力になりました。勝ててうれしいです。でも、まだ2年生なので、来年は今年とれなかったタイトルも全部とりたい。三冠狙います」と目指すところはもっと上だ。

 伊藤と高谷は春から大学生。高谷惣亮のロンドン五輪出場に刺激を受け、五輪のマットを現実の物として意識するようになったという。「京都の強さを世界に示す」-。そんな気持ちで闘い続けて欲しい。

少年の部優勝選手。左から浅井、高谷、伊藤。

後列に成年のメダリスト。左から永田裕城、高谷惣亮、田中幸太郎