※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
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師弟で表彰台。井上智裕監督(左)と中田陽
「ぎふ清流国体」では、兵庫県の育英高から少年グレコローマン60kg級で中田陽が優勝。同66kg級の高橋昭五が2位に入賞し、井上智裕監督が成年グレコローマン74kg級に出場して3位入賞。師弟で表彰台に昇る快挙を達成した。
井上監督は昨年、父であり前監督の井上雅晴氏の後をを継いで同校の監督に就任したばかり。これまで、インターハイのMVP選手や高校5冠王の選手など数多くの選手を育てた父の背中を追ってレスリングの指導に没頭している。
井上監督は昨年まで現役バリバリの全日本トップ選手だった。日体大時代からグレコローマン66kg級で活躍し、昨年12月の全日本選手権では五輪出場を視野に入れて出場。準決勝で、その後ロンドン五輪の代表になる藤村義(自衛隊)に敗れたものの、3位と健闘した。
レスリング選手としては「引退した」と話す井上監督だが、「朝練習は辞めましたが、高校生とのスパーリングは常にしています」と、体の動くうちは体を張って生徒指導に励んでいる。その効果は今大会で優勝1人、2位1人と証明された。
全国大会で複数のトップ選手が出てくると、監督としての夢が現実を帯びてくる。「今後の目標は全国の学校対抗戦でベスト4に入ることです。今年3月の全国高校選抜では、沖縄の浦添工が地元の子供たちを育てて優勝をしました。育英は私立なので他県からも選手を集めていますが、キッズレスリングにも力を入れています。沖縄をお手本にして優勝を目指したいです」。監督就任2年目の井上監督のこれからに注目したい。
■中田陽はグレコローマンで2大会を制覇!
8月の全国高校生グレコローマン選手権に続いて勝ち、グレコローマンで高校2冠王者となった中田は、3月の全国高校選抜選手権大会ではベスト16、4月のJOC杯は不出場と今年度の序盤は奮わなかった。インターハイで準優勝してブレークし、夏ごろから急成長した選手だ。急成長の理由は、井上監督の指導方法にあった。
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8月の全国高校生グレコローマン選手権に続く優勝の中田
中田が「先生がフリースタイル、グレコローマンのどちらでも使える技術を教えてくれますし、レスリングシューズを履いて直接指導してくださるので技術の向上につながっています」と話すように、井上監督が大学時代から活躍してきたことが、育英高の選手たちのプラスに働いている。
高校生では珍しいクロスボディロックからの攻撃も積極的に取り入れており、試合でのディフェンスもお手のもの。中田は「チームメートにクロスボディロックを得意とする高橋がいるので」と普段の経験値を生かして、完ぺきなディフェンスができたようだ。
フリースタイルよりもグレコローマンで実績を残した中田だが、「僕は小さいころからレスリングをやっているので、(今後は)フリースタイルをやっていきたい」と言う。高校卒業後は都内の大学に進学し、慣れ親しんだフリースタイルで勝負をかけていくことを宣言した。