※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
場外際で投げた登坂(青)。しかし、これはタイムアップ後
ここで相手が猛攻。登坂をとらえかける。登坂は必死になって振りほどき、背後に回られながら場外際で投げを打ち、相手を投げたかに見えた。レフェリーの判定は相手に1点。登坂の脚が場外に出たと解釈したのかもしれない。
ここで日本陣営はチャレンジ。終了直前の映像が流れ、登坂の脚は出ておらず、投げた時にはすでにタイムアップであることが映し出された。審判団は白板(両者0点)を上げ、この時点で、2-2で登坂の勝利が決まった。
しかしベラルーシ側がチャレンジのスポンジを投げ入れると、再度ビデオが流れ、ひとつ手前のベラルーシが登坂をテークダウンを狙っているシーンが流れた。スローで流れたそのシーンの1か所に、登坂の両ひざと左ひじがマットについているシーンがあり、その部分で静止され、アナウンス(審判団とは無関係)で「登坂がテークダウンを奪われています」といった内容が流れた。
確かに登坂の3点(両膝と左ひじ)がマットについているシーンがあるが、この時、相手のベラルーシ選手はまだ登坂の横にいて、このポジションを持って1点と解釈するのは無理がある。完全にバックに回った時、登坂は立ち上がり始め、ひじはマットから離れていて、両ひざだけがついている状況になっていた。この体勢では1点ではないはず。
しかし審判団はベラルーシのポイントとし、3-2でベラルーシの勝利が宣言された。
【左】登坂の両ひざと左腕がマットについているが、相手は登坂の横にいる。【中】相手がバックに回った時、登坂の左腕はマットから離れ、このあと立ち上がった。【右】スクリーンに映し出されたシーン。ここでも、相手はまだバックに回っていない
日本陣営は、下された判定が変わらないことは受け入れながらも、「今後のために」と、全試合終了後にジュリー(審判長)を務めたマリオ・サレトニグ氏(国際レスリング連盟・前審判委員長)に、チャレンジの末に出た結果に対して、チャレンジできるのかどうかの確認を求めた。
サレトニグ氏の回答は「できない」。だが、いったんチェアマンが白板を上げて両者0点を宣言し、ベラルーシのスポンジ投入によってビデオが再上映されたのは間違いない事実。レフェリーは「登坂の手を上げようと思ったが、ベラルーシの選手がいなくて上げられなかった。そうこうするうちにベラルーシからスポンジが投げられた」と話し、このビデオ上映がベラルーシからの要求によるものを認めるような説明をした。
ここで「争点が違うチャレンジだ。日本のチャレンジは終了間際の投げをめぐるチャレンジ、ベラルーシのチャレンジは、それをふまえたうえで、その前のアクション(ベラルーシ選手にテークダウンがあった)に対するチャレンジ」となれば、まだ納得がいった。
しかしサレトニグ氏の説明は、「先にベラルーシがチャレンジした」と、まったく事実に反する説明。「あなた達の位置からでは分からないだろうが、私はこの位置からしっかり見えていた」と話し、日本陣営の「そんなことはない」という抗議に対しても譲らない。
しかし、最初の段階でベラルーシに1点が入った。3-2で勝ち越した側がチャレンジすることなどありえない。「一連の流れの中で、2ヶ所のシーンを確認した」といった回答なら、まだ納得がいったが(それであっても、登坂に1点が入ったのは納得しがたいが…)、納得できないサレトニグ審判長の対応だった。