※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子)
ユニバーシアードの代表に一歩前進! 全日本学生選手権の男子グレコローマン55kg級は、昨年2位の田野倉翔太(日体大=右写真)が2連覇を狙った中野智章(日体大)を豪快な俵返しを決めて2-0で勝利。初優勝とともに昨年、決勝で中野に負けた借りを返した。
ベスト4が例年どおりに日体大の独断場となった同級。手の内を知り尽くしている同士の戦いを勝ち抜いたのは、ロンドン五輪代表の長谷川恒平(福一漁業)の練習パートナーとして現地に向かった田野倉だった。
大学1年生の2009年にこの大会の3位に入ったが、2年時は大学が出場停止処分中のため不出場。「3年で優勝すると周りに言われていたのに、できなかった」と、昨年は2位にとどまっていた。今大会は、最低でも優勝が“仕事”。それを達成したが、準決勝で同門の木村洋貴にグラウンドで3失点するなど内容が伴わず、「あんまり喜べない」と苦笑いを浮かべた。
■不利だった!? 決勝以外は全部「青」だった第2シード
昨年2位が評価されて今年は第2シードに座った。だが、現在のグレコローマンはドローナンバーで赤、青に分かれ、それがグラウンドの攻撃順序に関わってくる。「僕は最初にグラウンドの攻撃権が回ってくる赤が得意なのですが…」と、決勝以外はすべて青で登場した田野倉は、第1ピリオドはディフェンス、第2ピリオドはオフェンスというリズムで闘い続けなければならなかった。「圧勝しなければならない状況で、赤、青でやりにくいとかは言っていられないのだけど」とも付け加えたが…。
不利な状況を打破できたのは、来年7月にロシアで開催されるユニバーシアードの代表権がかかっていたことが大きい。「去年のインカレは、今年の10月に行われる世界学生選手権(フィンランド)の出場権がかかっていました。けれど2位に終わり、代表落ちして悔しい思いをした」と田野倉。
今年は、慣習でいけばこの大会がユニバーシアードの選考対象となると聞いて、モチベーションが再燃していた。「ユニバーシアードという“世界”でどこまでできるかな」―。まだ、代表有力候補になっただけで決定ではないが、大学2年から磨き上げているクロスボディロックからの攻撃を世界の舞台で披露することを楽しみにしている。
第2ピリオド、3点となる俵返しを決めた
グレコローマンのグラウンドの攻撃は、ノーマル・パーテールポジションとクロスボディロックからの攻撃の2種類がある。ノーマル・パーテールポジションは、ローリングをかけるための姿勢。日本のグレコローマン選手はフリースタイルの下地があるせいか、ローリングありきのパーテール・ポジション型が多いが、田野倉はクロスボディロック型を選択。「グレコローマン特有の型で、ヨーロッパではポピュラー。さらに俵返しはカッコいいから」と、世界で勝つための選択だ。
今大会もリフト技は好調で、決勝戦の第2ピリオドではクロスボディロックからすばやく俵返しを決めて、中野との同級生対決を制した。次の目標は「10月の全日本大学グレコローマン選手権で優勝し、全日本選手権で優勝したい。次のオリンピックは僕が行きます!」と宣言した。