※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫)
同僚の横澤徹(84kg級=左)とともに拓大グレコローマンの意地を見せた小森
高校時代に全国王者はなかったが、大学生最後の今年、全日本学生選手権の同級で優勝。初めて“全国一”というタイトルを手にした。「まだ実感が湧きませんが、先生を信じてレスリングをやってきてよかったです」と感無量の様子だ。
決勝の相手は、昨年、2年生なから学生の二大タイトル(全日本学生選手権、全日本大学グレコローマン選手権)を制した中村隆春(日体大)。練習では「ごろごろ回されることの多い相手」と実力差を感じていた選手だ。しかし、「自分を信じてやってきた」と、肩書きに負けることなく挑み、勝利をつかんだ。
試合内容は、3ピリオドともスタンド戦の1分30秒は0-0。グラウンドの攻防でピリオドを“交換”し、ピリオドスコアは1-1。勝負の第3ピリオド、グラウンド戦は防御となり、必死に守り切っての勝利だった。勝因を問われると、「自分を信じてやってきたことです」と、優勝の感想と同じ言葉を繰り返した。
優勝を決め、ガッツポーズ
■得意技はバック投げのリフト
中学時代まではバレーボールの選手。格闘技が好きだったことと、兄がやっていたことで、高校へ進んでからレスリングに取り組んだ。3年生では全国高校選抜大会、インターハイ、国体が3位で、全国高校生グレコローマン選手権は5位。同級の頂点には抜群の強さの北村公平(京都・京都八幡=現早大)がいて、歯が立たなかった。
「全国一になれなかったのが悔しく、日本一の大学でレスリングをやりたかった」と拓大へ進んだ。2年生(2010年)の時、東日本学生春季春新人選手権のグレコローマンで北村を破って優勝。秋季大会は84kg級で優勝し、「やっていける」という手ごたえをつかみ、グレコローマンの方が合っていると感じてスタイルを変えた。
第3ピリオド、中村(赤)のローリングを守り切った
今回は、昨年の学生二冠王者の繰り出す技をすべてカットでき、防御面ではかなり向上してきた。「攻撃力を身につけて、もっと上を目指したい」と言う。
優勝したとはいえ、「この内容で満足していたら、次はありません。今のままでは、とても『全日本選手権で優勝したい』とは言えません」ときっぱり。まだオリンピックといった目標は見えてこないようだが、「(拓大の)米満先輩がそうだったように、高校からレスリングを始めても、やれると思います」と、言葉の端々に“世界を目指したい”という気持ちがにじみ出ていた。