※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
全日本学生選手権(インカレ)の男子フリースタイル120kg級の決勝は、昨年の決勝と同じ金澤勝利(山梨学院大)-岡倫之(日大)の対戦へ。昨年2位に甘んじた金澤が2連覇を狙う岡を2-1で破り、最後のインカレで優勝を勝ち取った。(右写真)
「決勝がヤマ場」とばかりに準決勝までは快勝続きだった金澤。昨年のリベンジをすべく岡との決勝戦が始まった。第1ピリオドはともに無得点で岡が攻撃権となるクリンチへ。金澤はうまくクリンチを切って、エスケープに成功するが、残り数秒、岡のプレッシャーに耐え切れず、バックポイントを許してしまい、このピリオドを落とした。
第2ピリオドもクリンチとなり、今度は金澤が攻撃権となって3秒で岡を場外へ押し倒した。しかし金澤にとっては、クリンチの処理に失敗し、かろうじて獲得したピリオドだった。「クリンチを離してしまって、岡に逃げられてしまうと思いました。そこから、両差しで、前に出たら押し出せましたけど」。とっさにでた「差し」のフォロー。この「差し」からの攻撃で、金澤はあることに気が付いた。
「第3ピリオド、時間内に同じことをしたらポイントを奪えるのではないか」―。金澤にとって、第1ピリオドを落とすことは「自分の負けパターン」だったが、差しからの攻撃に自信をつけた金澤は勝機を見出し、第3ピリオドでも岡の圧力に負けじと、前に前に出ていた。
「インカレに向けて、小幡邦彦コーチと岡対策をだいぶやってきた」と、岡の動きがフェイントなのかタックルなのかを見抜くことができた。構えを無駄に崩さないことも功を奏し、岡が金澤を攻めあぐねていた第3ピリオドの後半、金澤がついに差しからの攻撃で岡を場外に突き出して1点をゲット。
ラスト5秒になると仲間からのカウントダウンが始まり、遂に終了のブザーが鳴った。「やっと、インカレで優勝できた。しかもフリースタイルで」。表彰式では、仲間らに胸中を吐露した。
■1年生大学王者も、翌年からスランプへ
金澤は高校時代からのエリート選手だ。「高校2年でフリースタイル、3年でグレコローマンを取りました」と両スタイル国体王者の肩書を持ち、山梨学院大に進学してすぐに頭角を現した。2009年春の東日本学生春季新人戦で両スタイル優勝の快挙。秋には山梨学院大のレギュラーを勝ち取り、全日本大学選手権96kg級で1年生王者に輝いた。
岡の圧力に負けず、昨年のリベンジを果たした金澤(青)
3年生の昨年は思い切って120kg級にアップ。高田裕司監督から「120kg級の方が96kg級よりのびのびやれているから」と助言もあって、正式に120kg級として練習を積んできた。「この会場は縁起がいい。1年で大学選手権を優勝した時の会場」と、様々なことが追い風となって金澤の背中を押した。
現在大学4年生。「卒業後も本格的なレスリングを続けるつもり。そのためにも、今回フリースタイルで優勝できてよかった」と金澤。25日からのグレコローマンにも120kg級で出場する予定。「両スタイル優勝して、将来のステップにします」と最高の笑顔を見せた。