※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)
全国高校生グレコローマン選手権の50kg級のチャンピオンとなったのは、これまで全国での優勝経験がない上鍵雄志(うえかき・ゆうじ=奈良・大和広陵、右写真)。高校からレスリングを始めた上鍵は、フリースタイルでは近畿の大会で2位が最高。昨年のこの大会は3位だった。
「今年こそは優勝したい」という思いは強く、直前のロンドン五輪で男子フリースタイル66kg級・米満達弘(自衛隊)が金メダルを獲得したのをテレビで見て、「金メダルをとりたいと思いました。応援してくれる先生方や仲間のためにも」と影響を受けた。
決勝で対戦したのは、過去2度負けたことがある相手。前回の対戦で負けたあと、後悔が残っていた。「まだ力が残っている、と思ったんです。今回は絶対に出し切ろうと思いました」。松尾新監督、森太郎コーチ、そしていつも指導に来てくれる全日本選手権表彰台常連のOB、グレコローマン120kg級中村淳志(カンサイ)の顔が浮かんだ。「集中。あきらめないこと。前に出る」。この3つが決勝前の監督の言葉。必ず守ろうと決めて臨んだ。
決勝で闘う上鍵(青)
「優勝して先生と仲間のところに戻ったとき、ホッとして、涙が出ました…」とはにかむ上鍵。あきらめず最後まで全力を出し切り、勝ち取った初優勝。全国優勝は同級生の誰も成し遂げていない。米満の五輪金メダル級の殊勲だった。
進学についてはまだ悩んでいる。もしかしたら国体が最後の試合になるかもしれないという思いもあった。この勢いで国体も全力を出し切り優勝を目指す。