※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ロンドン(英国)、文・撮影=保高幸子】男子フリースタイル最重量級の決勝は2004年アテネ五輪、2008年北京五輪と連覇してきたアルトゥール・タイマゾフ(ウズベキスタン)の五輪3連覇で華を飾った。今大会は女子63kg級の伊調馨、同55kg級の吉田沙保里(ともにALSOK)に続いて3人目の五輪三連覇となった。
3回戦のイラン戦はクリンチ勝負になり、100パーセントの仕上がりとは思えない試合だったが、準決勝は会心の試合でドラグネフ(アメリカ)を撃破。試合後、タイマゾフは自国応援団に向け指を一本立てて、「オレがチャンピオンだ」とアピールした。調子を取り戻したタイマゾフは決勝の相手、昨年世界3位のモズマナシビリ(グルジア)に対してもスピードとパワーのレスリングでポイントを奪い、ストレートで勝利を修めた。
2008年北京五輪で五輪連覇したあと、2009年は休養、2010年世界選手権(ロシア)ではロシアのマホフに敗れ2位。同年のアジア大会(中国)は優勝したが、昨年の世界選手権(トルコ)は8位と順位を落とし、五輪3連覇は厳しいと言う見方も出ていた。
しかしタイマゾフは照準を合わせてきていた。「このために生きてきた。いつもこのことだけを考えていた。今までに金2つと銀1つ(2000年シドニー五輪)を獲得したけど、3つめの金が欲しかった」と話す。
カレリンに並ぶ数の五輪メダルを獲得したタイマゾフ。年齢は33歳で、引退の時が近いだろう。しかし、「五輪メダル数で並ぶことができてうれしい。でも、世界選手権のメダルが1つ、カレリンには及んでいない。だから超えるためにはあと2シーズン、続けないと」と現役続行を明言した。
6ヶ月の休養ののち、来年の世界選手権(ハンガリー)には復帰する予定。まずは来年の世界選手権でカレリンの優勝回数に並び、「若い時に写真を見て憧れていた」カレリン超えを目指す。