※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ロンドン(英国)、文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫】すべてやり切った、悔いなし! 男子フリースタイル96kg級の磯川孝生(徳山大職)は、初戦は相手のサモア選手がは棄権して不戦勝を収めたが、2回戦のマゴメド・ムサエフ(キルギス)にストレートで敗退。敗者復活戦もなく、試合終了となった。
試合後、開口一番に「結果とかではなくて、自分のすべてをオリンピックの試合に出せたので、全く後悔はない」と振り返った。前回の北京五輪の96kg級は、磯川も出場した五輪予選で出場権を取れなかった。それをバネに4年間、海外で勝てる力を養ってきた結果が、このロンドン五輪出場だ。
2回戦のキルギス戦も一方的に負けたわけではない。しっかりと組みあっても力負けせず、最後まであきらめなかった。第2ピリオドの中盤には、レフェリーが1ポイントコーションを促す場面もあり、磯川がスタンドで優位に進めていた証拠だ。結局、ピリオドスコア1-2で敗れたが、磯川が全力で闘い抜いているのが分かった。 、
■大学職員の仕事と両立して五輪へ
「五輪のためだけに、すべてをかけてきたし、いろいろな人に迷惑をかけながらやってきた。小さいころから憧れてきた大きい夢の舞台に立って、本当に幸せです」。磯川の仕事は徳山大の職員。山口県に拠点を構えるが、全日本合宿などで東京などを往復する日々。仕事と両立しながらロンドン五輪に向けて調整してきた。
96kg級は日本人には不利だと言われる。だが北京五輪では加藤賢三がグレコローマン96kg級に出場し、今大会は同級に斎川哲克(両毛ヤクルト販売)、フリースタイルには磯川が出場し、ハンデを乗り越えた。「重量級だとくくったことは全くない。みんなと4年前から軽量級に負けないくらいきついことをやってきたので、この舞台に立つのがすごい意味があることだと分かっている」。(磯川)
まだ五輪の舞台でメダルに絡めていない状況に、磯川は、「勝つことは、今後の日本重量級の未来に託したいと思います。ボクや斎川が五輪に出場したので、これからは日本重量級は勝てないという言い訳はできないので、覚悟してやってほしい」。進退を具体的には明らかにしなかったが、「立派な徳山大学職員になれたらなと思う」と、ロンドンが一つの区切りというニュアンスを漂わせた。