※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ロンドン(英国)=増渕由気子 撮影=矢吹建夫】双子で同時メダルならず-。男子フリースタイル60kg級の湯元健一(ALSOK)は3回戦で2010年55kg級世界選手権2位のトグルル・アスガロフ(アゼルバイジャン)に0-2とストレートで敗退。敗者復活戦に回り、ドイツ選手に快勝して銅メダルマッチに挑んだが、3位決定戦でコールマン・スコット(米国)に第1ピリオドをクリンチで奪うものの、第2、3ピリオドをタックルで崩されて1-2で惜敗。北京五輪銅メダルに続く連続メダルはならなかった。
前日の男子フリースタイル55kg級では、双子の弟・湯元進一(自衛隊)が銅メダルを獲得し、“双子でメダル”が期待されていたが、それはかなわなかった。
湯元は今回の五輪代表の中で唯一、五輪と世界選手権両方でメダルを獲得している選手。それだけに「銅メダルは取れるものだと思っていた」と予想外の結果に肩を落とした。北京五輪後、結婚し子ども生まれた。「家族を連れてきたし、親も見に来ているのに…。自分の実力不足です」と完敗を認めた。
■コーチ陣は闘う前からアゼルバイジャンをマーク
北京五輪の準決勝で負けたバシル・フェドロイシン(ウクライナ)と、今回も準決勝で対戦する組み合わせだった。だが、田南部力フリースタイル監督(警視庁)は「フェドロイシンが問題なのではなく、3回戦のアゼルバイジャンが要注意だ」と指摘。アスガロフは、2010年の世界選手権には55kg級に出場し、日本代表の稲葉泰弘(警視庁)を破って決勝に行った選手で、コーチ陣はマークしていた。
アスガロフは55kg級から上げたばかり選手とは思えないほど足腰が強く、湯元が組みついて力技に行っても動じず、55kg級仕込みのスピードで湯元から得点を奪っていった。「相手が強かったです。取れるところで取れなかった…」。アスガロフに負けて、湯元の金メダル挑戦は終わった。
銅メダルマッチは、米国のスコットとの争いになった。スコットには5月のワールドカップ(W杯)で黒星をつけられている。「(前回は)負けていたので、今回は大丈夫だと思ったんですけど」。
負けた原因を突き詰め、対策や研究をしっかりしてきたため自信を持って臨んだが、第3ピリオド、1点リードで迎えた後半、「(相手がタックルに2度来て)1発目はすぐ切って、さぁ(自分がタックルに)入ろうと思ったら、さらに入り込まれた。やられました」。最後の詰めで、相手のがむしゃらな攻めに屈した。
4年前はメダルを取れて、今回は取れなかった。その理由を問うと「分かりません。僕自身は(北京より)全部が強くなったので、銅メダルの力はあると思った」と回答。ただ、湯元は一人で戦っていたわけではない。五輪の聖地を、双子の弟と二人同時に踏んだことは、結果以上に満足したものだっただろう。「進一がよく頑張ってくれた。二人で自分のレスリングができたので十分です」。