2012.08.12

【ロンドン五輪第7日・特集】被災地から佐藤響選手(岩手・宮古二中)がロンドンを訪れ試合観戦

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

佐藤選手(左)と交換留学に参加の山口照彩君(福島・泉崎中)

 【ロンドン(英国)、文・撮影=樋口郁夫】レスリング競技第7日の会場に、今年3月の全国少年少女選手権6年生の部42kg級2位の佐藤響選手(当時山田クラブ=現岩手・宮古二中)の姿があった。昨年の3・11東日本大震災のあと、被災地の子供たちの支援活動をする東日本大震災被災児童自立支援プロジェクト「Support Our Kids(事務局:NPO法人次代の創造工房)」の活動の一環でロンドンを訪れていた。

 現地に同行した引率の青島氏は「被災された子に何とか前を向いてもらおうと活動しています。海外へ連れて行き、文化交流をさせて日本にないものに接することで、何か新しいものにチャレンジしてくれれば」と説明する。昨年はニュージーランドに50人を連れていき、今年は英国のとニュージーランド、このあと米国へと派遣が予定されている。英国組は24日まで滞在し、英国の文化にふれる。

 佐藤選手の父・学さん(44歳)は津波で流され、今も行方不明。あと3ヶ月で死亡が確定する状況だという。自宅は跡形もなくなり、避難所生活を経て現在は市営住宅に住んでいる。「最初のうちは悲しんでいました。少したって、そんなことを考えてばかりいては前に進めないな、と思うようになりました」-。

 レスリングをやめようと思ったそうだが、周囲のみんなが支えてくれてとどまった。「今、ここに来ることができ、続けさせてくれた人に感謝の気持ちでいっぱいです」と言う。帰国したら、大人の顔になり、中身も大人になった自分を「母に見せたい」と話した。

 初めて見たオリンピックは「トップアスリートが闘う最高峰の闘いですね。間近で見て感激です。技をベースに力や勝負強さなど、すべてにおいて上回っている選手が勝っていますね」と言う。この日は日の丸が揚がらず残念だったが「頑張ってくれました。湯元選手の上を行く選手を目指して頑張りたいと思います」ときっぱり。

 オリンピックは「世界の最高峰の闘いということを実感しました。技をベースに、力や精神力など、すべてに上回っている選手が勝っていますね」と感じたという。この日は3日前に金メダルを取った小原日登美(自衛隊)とも対面し、感激の面持ち。

 今回の経験をもとに、より力強く生きていくことで、天国の父(まだ確定はしていないが)も喜んでくれるはずだ、