※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
沙保里が優勝し、歓喜の母・幸代さんと兄・栄利さん
「感無量です。皆様のおかげです。沙保里にはありがとうございました、と言いたいです」と声を振り絞るように話した。「家族の夢がかないました。1度でも金メダルを取るのは難しいのに、3度も取ることができまして本当に感謝です。(5月に)負けたことを乗り越えての3連覇、本人が一番うれしいと思います」と話した。
目の前には多くのカメラマン(スティール・TV)が陣取っていた。立ち上がった幸代さんを写そうと、みんな立ち上がったしまったため、優勝直後の吉田の姿をしっかりと追うことができなかったという。報道陣に抗議してもおかしくないケースだが、「(優勝の)映像があったら欲しいです。あとでじっくり見てみます」と笑顔。
沙保里が「今までの中で一番緊張している」と口にしていたこともあり、母も過去2度以上に緊張して臨んだ大会だったという。そんな中でも、過去2度の大会以上に心強かったのが、夫がマットサイドにいたこと。父がセコンドにいて、沙保里にアドバイスを送るというのは、沙保里が子供の頃に何度も見てきた光景だ。
涙が止まらない兄・栄利さんを女子マラソンの高橋尚子さんが直撃
3歳からレスリングを始めた沙保里。「最初は親の独断と偏見でやらせていたんですよ。でもアテネの前に、『レスリングやってきて本当によかった』と言ってくれまして、それが本当もうれしかったです」と思い出を話した。
母の隣では、兄・栄利さんも応援。沙保里が優勝を決めてカメラマンが幸代さんに殺到する脇で、涙をぬぐった。「過去2度の大会も泣いているんですけど、今回ほどうれしい優勝はないです。オヤジの(マット上の)あの姿を見られることは、吉田家にとって本当に幸せなことです」と、父と妹が同時に上がったマットでの優勝に感慨深いものがあった様子。
五輪3連覇や「カレリンと並ぶ」などとも言われた今大会だが、吉田一家にとっては、父と娘で臨むオリンピックということの方が、より大きな価値があり、誇りに思えることだった。
![]() 闘う沙保里を応援する母・幸代さんと兄・栄利さん |
![]() 優勝を決め、栄夫人と抱き合って喜ぶ幸代さん |