2012.08.09

【特集】最愛の妻の金メダル獲得に大粒の涙…小原康司さん

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【ロンドン(英国)、文・撮影=樋口郁夫】日本女子レスリングの先陣を取って48kg級の小原日登美(自衛隊)が金メダルを獲得。小原を支えた夫・康司さんは「みんなに支えられてここまで来ました。あいつは、本当に…」と話すと、言葉が途切れ、大粒の涙がほほを伝わった。

妻の金メダル獲得に、周囲の人へ感謝の気持ちを表す小原康司さん

 気を取り直して「本当によく頑張りました。何回もくじけそうになりましたが、多くの人に支えられ、素直に続けてこられた。みんなから愛されて、本当に幸せ者です」と続けた。

 決勝は第1ピリオドを0-4で落とす苦しいスタートだったが、「体力があるから、第3ピリオドまでもつれれば絶対に(勝てる)と思っていました。ここまで来られたのは、きつい練習の賜物。それを出すためにも、第2ピリオドを取り返せば絶対に勝てる」と信じていたそうだ。先制されたのは、「緊張していたからでしょう」と言う。

 2010年秋に入籍して以来、一心同体でやってきた。「自分は日登美がいなければダメ。日登美は自分がいなければ…、本人に聞いてほしいですけど」と照れて言葉を止めたが、2人で取った金メダルとい思いが強いようだ。それでも「周囲の人のおかげです。職場の人からも多くのサポートを受けました。いいお土産を持って帰れます」と話すと、再び涙がほほを伝わり、多くの人支援に感謝した。

 51kg級が五輪で実施されていたら、もっと早くに五輪金メダリストになれていただろう。「遠回りしたように見えるけど、これが最短距離だったのかな、とも思います。執念ですね。最後に一番いい色の金メダルが取れてよかった」と喜びに浸った。

■「粘りのある子ですから」と、逆転勝ちを信じた父・清美さん

 小原の父・坂本清美さんは「言葉になりません。いろんな苦労が脳裏をよぎって。本当によくやってくれた。感謝したいし、『ありがとう』と言いたい」と第一声。思い出されたのは、「ひざのけがで一度は選手生活を引退し、体重が80kg近くにもなって、うつ病になったりと、どん底の時期」だという。「そんなことを乗りえ超えて今がある。夢みたいですね。よくここまでやってくれた」と言う。

娘の金メダル獲得を喜ぶ父・清見さん。手前は母・万里子さん

 決勝の第1ピリオドを取られたが「日登美はああいう状況から強いんですよ。世界選手権でも逆転で勝ってきた。どん底からはい上がってきた粘りのある子ですから」と、逆転勝ちを信じていたという。表彰台で首から金メダルをかけた姿は「娘でないように思えた」そうだ。

 母・万里子さんは「心から『おめでとう』と言いたいと思います。(決勝の)第1ピリオドを取られた時は心配でしたが、落ち着いていたので、日登美を信じて応援していました。夢がかなってうれしいです」と感無量の様子。

 姉に五輪出場の夢を託した妹・真喜子さんは「一度は自分が目指したところ。実現してくれて感謝しています」と言う。「2人取った金メダル?」という問いに、「はい、と言っていいのかどうか…。でも姉が『自分(真喜子)の分も』と言ってくれたので、はい、と言わせて、もらいます」とにっこり。