※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

花咲徳栄メンバーに胴上げされる高坂監督
三笠宮賜杯全国高校総体(インターハイ)レスリング競技の学校対抗戦は花咲徳栄(埼玉)が決勝で昨年の優勝校、霞ヶ浦(茨城)を5-2で破って全国制覇を達成した。
花咲徳栄にとっては創部8年目で昨年まで4度も決勝の舞台にのぼりながら悲願達成はお預けになっており、5度目の正直で初の頂点をもぎ取った。
チームを勝利に導いた高坂拓也監督は「やっと優勝できました。決勝の相手は春の王者、浦添工か霞ヶ浦かと思っていましたが、霞ヶ浦が上がってきて正直、まずいかなという気持ちがありました。霞ヶ浦には2月の関東選抜、6月の関東大会で負けていることもありましたので」と振り返る。
3月の全国高校選抜選手権大会の決勝で浦添工には負けているとはいえ、霞ヶ浦のほうが同じ関東ブロック同士で手の内を互いに知り尽くしている部分がある。やりにくさで言えば霞ヶ浦のほうが上だったのだろう。
■中村倫也がアジア・カデット王者を破る!
だが、高坂監督には自信があった。「いつも通りやれば勝てると思いました」と生徒たちに練習通りのレスリングをしようと喚起。それに応えたのが、花咲徳栄の軽量級~中量級の選手たちだ。50kg級の前田頼夢がストレートで勝利しスタートダッシュに成功すると、55kg級の中村倫也が7月のアジア・カデット選手権で優勝した55kg級の樋口黎を2-0で破る殊勲を挙げる。
続く66kg級で主将の山田来哉はクリンチにもつれる激戦を2-1で制した。中村と山田は6月の関東高校大会で同相手に黒星を喫しており、インターハイという最高の舞台でリベンジを達成した格好だ。「中村は減量の疲れもあったが、気持ちで樋口を乗り越えてくれた。山田はクリンチだったが主将として流れを持ってきてくれた」(高坂監督)。
一気に3連勝した花咲徳栄は1年生の田辺が登場。中学時代に全国中学選手権大会で優勝した経歴を持つ選手が高校で衝撃デビューを飾って勝利。4勝目をもぎとって花咲徳栄に初優勝をもたらした。
■弱冠32歳! 高坂拓也監督「若くてもできるんだ」
花咲徳栄は創部8年で過去4回もインターハイの決勝に進み、近年でもっとも力を伸ばしたチームだ。だが、2位に終わった昨年までのチームと今年で大きく違う点があった。「個人戦より団体という意識が強くなった」。
もともと花咲徳栄には個人の全国チャンピオンがコンスタントに出ていた。学校対抗戦の後に控える個人戦を意識しながら試合に臨むことが多かったが、今回は「個人より団体」を核において練習を積んできた。減量がキツい中村でさえ全試合出場した。最大の戦力を学校他校戦で100パーセント出しきり、優勝の2文字にたどり着いたのだ。
今大会の花咲徳栄の優勝は高坂拓也監督にとっても大きなターニングポイントとなった。高坂監督は「私は現在32歳。若い指導者でもやればできることを見せたかった。生徒のために頑張るのは、若くてもそうでなくても変わらない」と同世代の指導者の活性化を望んだ。悲願達成した高坂監督に次の目標を聞いてみると、「大澤監督の作った記録は偉大だが、目指してみたい」と言い切った。