2012.08.01

【記録】優勝回数以外にもある吉田沙保里の“カレリン超え”の可能性

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 8月5日から始まるロンドン五輪のレスリング競技では、日本の金メダル獲得の期待のほか、女子55kg級の吉田沙保里(ALSOK)の五輪と世界選手権を合わせた優勝回数が「12」となり、男子グレコローマン130kg級で不滅の記録をつくったアレクサンダー・カレリン(ロシア)と、数字のうえで並ぶことになる。

 五輪で勝ち、9月の世界女子選手権(カナダ)でも優勝しれば13度目の世界最高峰となり、単独トップに躍り出るが、吉田が歴代最高となる記録は、優勝回数だけではない。“カレリン超え”の可能性のある記録をさぐった。


■五輪+世界選手権の優勝回数

 トップはアレクサンダー・カレリン(ロシア)の12度(五輪3度・世界選手権9度)。吉田沙保里は現在11度(五輪2度、世界選手権9度)。ロンド五輪で優勝すればカレリンと並び、9月の世界女子選手権(カナダ)にも出場して優勝すれば「13度目の世界最高峰」なって歴代トップとなる。

 3位がアレクサンダー・メドベジ(ソ連)の10度、4位がブバイサ・サイキエフ(ロシア)と伊調馨(日本)の9度。

《五輪+世界選手権の優勝回数》

No. 選 手 名(国 名) 階   級 優勝回数 内   訳
アレクサンダー・カレリン(ロシア) グレコローマン130kg級 12度 五輪3・世界9
吉田沙保里(日本) 女子55kg級 11度 五輪2・世界9
アレクサンダー・メドベジ(ソ連) フリースタイル・ヘビー級 10度 五輪3・世界7
ブバイサ・サイキエフ(ロシア) フリースタイル74kg級ほか 9度 五輪3・世界6
伊調馨(日本) 女子63kg級 9度 五輪2・世界7
セルゲイ・ベログラゾフ(ソ連) フリースタイル57kg級ほか 8度 五輪2・世界6
アルセン・ファザエフ(ソ連) フリースタイル68kg級 8度 五輪2・世界6
バレンチン・ヨルダノフ(ブルガリア)  フリースタイル52kg級 8度 五輪1・世界7

 

■五輪+世界選手権の連続優勝記録

 これもアレクサンダー・カレリン(ロシア)の「12年連続」にかなう選手はおらず、吉田の11大会連続優勝」は歴代2位の記録(女子の場合は2008年に五輪と世界選手権があったため、「○大会連続」で表記)。吉田は五輪で勝てばタイ記録となり、9月の世界女子選手権でも勝てば単独トップとなる。

 続くのはセルゲイ・ベログラゾフ(ソ連)の8大会連続優勝(ソ連が不参加した1984年ロサンゼルス五輪を除く)が続き、マハーベック・ハダーチェフ(ソ連)と伊調馨の7年連続が続く。いずれもストップしている記録。現在はルールの影響もあるかもしれないが、3年連続優勝すら難しい時代。カレリンの記録を破る可能性を唯一持っているのが吉田ということになる。

《五輪+世界選手権の連続優勝記録》

No. 選 手 名(国 名) 階   級 連続優勝回数
アレクサンダー・カレリン(ロシア) グレコローマン130kg級 12回連続(1988~99年)
※1 吉田沙保里(日本) 女子55kg級 11回連続(2002~継続中)
※2 セルゲイ・ベログラゾフ(ソ連) フリースタイル57kg級ほか 8回連続(1980~88年)
マハーベック・ハダーチェフ(ソ連) フリースタイル90kg級 7回連続(1986~92年)
伊調馨(日本) 女子63kg級 7回連続(2002~08年)

※1=2008年は五輪と世界選手権で優勝
※2=ソ連が不参加だった84年ロス五輪を除く


■五輪+世界選手権での連勝記録

 何連覇も達成している選手のみが対象となるので、前項の5選手を中心に調べてみると、アレクサンダー・カレリン(ロシア)が1988年ソウル五輪から2000年シドニー五輪準決勝まで61連勝をマークし、文句なしのトップ。吉田は2011年世界選手権で優勝して54連勝。

 不参加だった1984年ロサンゼルス五輪を除いて8大会連続優勝しているセルゲイ・ベログラゾフ(ソ連)は、詳細な記録が残っていない年が3大会あり、推定になるが、「46連勝」をマークしている。五輪・世界で7年連続優勝しているマハーベック・ハダーチェフ(ソ連)は、1991年大会は予選で負けながら当時の勝ち点方式のルールで決勝に勝ち上がり優勝したもの。連勝記録は「32連勝」でストップ。

 伊調馨は2002年世界選手権から2008年北京五輪までの7度の大会で「32連勝」をマークした。ジョン・スミス(米国)は伊調より少ない6連覇だが、当時は2敗するまで闘う勝ち点方式で試合が行われており、選手数は今よりも少なくとも、1大会7試合こなして優勝というケースもあった。連勝記録は「38」まで伸びている。」

《五輪+世界選手権での連勝記録》

No. 選 手 名(国 名) 階   級 連 勝 数
アレクサンダー・カレリン(ロシア) グレコローマン130kg級 61連勝(1988~2000年途中)
吉田沙保里(日本) 女子55kg級 54連勝(2002~継続中)
セルゲイ・ベログラゾフ(ソ連) フリースタイル57kg級ほか 46連勝(1980~88年)=推定
ジョン・スミス(米国) フリースタイル62kg級 38連勝(1987~92年途中)
マハーベック・ハダーチェフ(ソ連) フリースタイル90kg級 32連勝(1986~91年途中)=推定
伊調馨(日本) 女子63kg級 32連勝(2002~継続中)

■メジャー国際大会(五輪+世界選手権+大陸選手権)優勝記録

 世界一に何度も輝く選手になると、大陸選手権までは出場しなくなるのが普通だが、例外はアレクサンダー・カレリン(ロシア)。世界一に輝いていた1988~2000年の間、欧州選手権も負傷で欠場した1997年以外、毎年出場していた。メジャー国際大会の優勝は24度(五輪3度・世界選手権9度、大陸選手権12度)。13年間にわたっての記録だ。

 吉田沙保里も大陸選手には出場している方で、2002年のアジア大会で優勝して以来、7度の優勝がある。メジャー国際大会は合計で18度の優勝(五輪2度、世界選手権9度、大陸選手権・大会7度)。今年の2大会で優勝すれば20度のメジャー国際大会優勝となる。2016年リオデジャネイロ五輪を目指せばカレリン超えの可能性は出てくるが…。

 五輪と世界選手権で10度優勝のアレクサンダー・メドベジ(ソ連)は、欧州選手権の優勝は3度にとどまっており、メジャー国際大会の優勝は「13度」。五輪・世界選手権9度優勝のブバイサ・サイキエフ(ロシア)は、欧州優勝は6度優勝なので「15度」。

 以下、五輪と世界を8度優勝、7度優勝している選手でも大陸選手権の優勝は少なく、吉田の「18度優勝」は、現段階では続く選手が見当たらない。

《メジャー国際大会(五輪・世界選手権・大陸選手権)優勝記録》

No. 選 手 名(国 名) 階  級 優勝回数 内  訳
アレクサンダー・カレリン(ロシア) グレコローマン120kg級 24度 五輪3・世界9・大陸12
吉田沙保里(日本) 女子55kg級 18度 五輪2・世界9・大陸7
ブバイサ・サイキエフ(ロシア) フリースタイル74kg級ほか 15度 五輪3・世界6・大陸6
バレンチン・ヨルダノフ(ブルガリア) フリースタイル52kg級 15度 五輪1・世界7・大陸7
ハムザ・イェルリカヤ(トルコ) グレコローマン84kg級ほか 13度 五輪2・世界4・大陸7
セルゲイ・ベログラゾフ(ソ連) フリースタイル57kg級ほか 13度 五輪2・世界6・大陸5
アレクサンダー・メドベジ(ソ連) フリースタイル・ヘビー級 13度 五輪3・世界7・大陸3
伊調 馨(日本) 女子63kg級 13度 五輪2・世界7・大陸4
ニコライ・バルボシン(ソ連) グレコローマン100kg級 12度 五輪1・世界5・大陸6
アルセン・ファザエフ(ソ連) フリースタイル68kg級 12度 五輪3・世界5・大陸4
マハーベック・ハダーチェフ(ソ連) フリースタイル90kg級 12度 五輪2・世界5・大陸5

■メジャー国際大会(五輪+世界選手権+大陸選手権)連勝記録

 アレクサンダー・カレリン(ロシア)が13年間をかけて「113連勝」(五輪19連勝、世界42連勝、欧州52連勝)をマーク。吉田沙保里は現在、「79連勝」(五輪8連勝、世界46連勝、大陸25連勝)を継続中。この分野でカレリン超えを目指すには、2016年リオデジャネイロ五輪まで世界選手権とアジア選手権・大会に出続ける必要がある。

《メジャー国際大会(五輪+世界選手権+大陸選手権)連勝記録》

No. 選 手 名(国 名) 階   級 連 勝 数
アレクサンダー・カレリン(ロシア) グレコローマン130kg級 113連勝(1988~2000年途中)
吉田沙保里(日本) 女子55kg級 79連勝(2002~継続中)
セルゲイ・ベログラゾフ(ソ連) フリースタイル57kg級ほか 60連勝(1980~88年)=推定
ジョン・スミス(米国) フリースタイル62kg級 50連勝(1987~92年途中)
バレリ・レザンセフ(ソ連) フリースタイル90kg級 50連勝(1970~76年)