※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子)

高校生の最大のイベントであるインターハイが8月2~5日に新潟・新潟市鳥屋野総合体育館で行われる。3月の全国高校選抜選手権では浦添工(沖縄)が初の全国制覇を達成し、初めて沖縄に真紅の優勝旗が渡った
(右写真)。春の王者・浦添工が連覇するのか、または昨年王者の霞ヶ浦(茨城)や過去4度、準優勝の花咲徳栄(埼玉)らが春の雪辱を晴らすのかが見どころだ。
■浦添工、強化プランの集大成で夢の春夏連覇なるか
春の全国選抜選手権の決勝で花咲徳栄(埼玉)を4-3で破って優勝した浦添工は、インターハイで春夏連覇を目指す。ほとんどのメンバーが2010年沖縄インターハイに向けて小学生から強化に取り組んできた選手で、今年は最終学年の高校3年生を迎えた。屋比久監督は「50kg級の新垣忠勝が負傷してしまい、代わりが立てられず、6人で闘わねばならない状況」と説明し、アクシデントがあったが、屋比久監督の気持ちは折れていない。2008年のセンバツでは京都八幡(京都)が6人のエントリーで層の厚い霞ヶ浦に勝って優勝した前例もある。
66kg級の屋比久翔平、74kg級の本村匠、84kg級の与那覇竜太、120kg級の宮国雄太という中~重量級ラインナップに死角はない。「軽量級も55kg級の大城が伸びてきて頼もしくなってきた。相手がどこでも4-3と競り勝っていきたい」という屋比久保監督の強化の集大成としても春夏連覇を達成したいところだ。
■5度目の正直を果たせるか
浦添工の勢いに「待った」をかけたいのは、過去4度も決勝に進みながら戴冠を逃している花咲徳栄だ。高坂拓也監督は「何度目の正直だろうか。シルバーコレクターと言われないようにしたい」と、“5度目の夏の正直”に気持ちを据えた。
昨年は、今年6月の全日本選抜選手権男子フリースタイル96kg級で大学1年ながら優勝した山本康稀(日大)を大将の120kg級に据え過去最大の戦力を備えていた。しかし決勝で霞ヶ浦に粘り負けた。
だが、今年のメンバーは春を経て昨年並みにたくましくなってきた。軽量級の中村倫也や山田来哉は花咲徳栄のキッズ時代から一貫指導を受け、全国中学生選手権でも活躍してきた選手。春と同様に軽量級で勢いをつければ、春より一段と成長した120kg級の山本晋也が4勝目をもぎ取ってくれるだろう。
花咲徳栄の場合、県内で埼玉栄とのし烈な県予選を制してインターハイに出場してくる。高坂監督は「個人戦は埼玉栄の選手の方が花咲徳栄より多いんです。でも、団体はうちが勝ちました。生徒の中にも団体だったら勝てるという意識が芽生え、まとまりが出ていています」と順調な仕上がりを含ませた。
■大澤マジック2012は実現するか
勝負の世界は何が起こるか分からない―。高校レスリング界の雄・霞ヶ浦がここ数年は下馬評を覆し、強豪の伝統と勝負強さでインターハイを制す状況が続いている。新チーム結成当初は、ブロック大会で花咲徳栄に黒星を付けられることもあるが、大澤友博監督は春から夏までの短期間でインターハイで優勝するチームを作り上げてくることに定評がある。
その予兆はすでに始まっている。7月初旬のアジア・カデット選手権(キルギス)の男子フリースタイル54kg級に出場した樋口黎が優勝し、インターハイへ向けていいステップを踏んだ。大澤監督は「ロンドンに負けない熱い闘いを見せます」とコメント。順調に勝ち進めば準々決勝で春の王者・浦添工と対戦する。春のセンバツで霞ヶ浦VS浦添工のカードは実現していないので、実現すれば最大の注目となる一戦だ。