※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
昨年の世界選手権決勝で闘うゴメス
プエルトリコはこれまで「強豪」というイメージはなく、実際に五輪や世界選手権でのメダル獲得は2002年に女子59kg級でマベル・フォンセカが銅メダルを取ったのが初めて。男子のメダル獲得はなく、1984年ロサンゼルス五輪のフリースタイル57kg級でオーランド・カカレスが4位に入ったのが最高だった。
今回の世界王者撃破によって昨年の世界2位がフロックではないことを証明。1年前には想像もしなかった選手がロンドン五輪の優勝戦線に浮上してきた。
ゴメスは1986年8月5日、ドミニカ共和国生まれ。5歳の時に父がなくなり、母と2人の兄弟とともにプエルトリコへ移住。その後、米国フロリダ州のブランドン高に留学し、最高学年時に州のチャンピオンに輝いた。
ミシガン州立大に進み、2009年のNCAA(全米学生)選手権133ポンド級で優勝。2010年5月に卒業したあとは、NCAAでのライバル大学だったペンシルベニア州立大でフリースタイルを練習。日本とも馴染み深い同大学は、2004年アテネ五輪チャンピオンのカエル・サンダーソンが監督を務めており、カレッジスタイルのみならずフリースタイルでも頭角を現したのはサンダーソンの指導によるところが大きいようだ。
2010年の世界選手権(ロシア)に初出場し、この時は初戦でグルジア選手に敗れて20位。2011年2月のデーブ・シュルツ国際大会(米国)では前田翔吾と対戦し、1-2で敗れているものの、第1ピリオドはテクニカルフォール勝ちしている(最終的には3位)。
同年5月のパンアメリカン選手権(コロンビア)で優勝し、9月の世界選手権(トルコ)で決勝進出と、一気に実力を伸ばした。この時のクドゥホフ戦は0-2(0-5,0-1)だったが、第1ピリオドは0-0のあとのクリンチから5点タックルを決められたもので、4分間の闘いでは0-1と善戦していた。
その後、10月のパンアメリカン大会(メキシコ)でも優勝。今年は5月のイオン・コルネアヌ国際大会(ルーマニア)、今月初めの「トルネオ・シッタ・サッサリ国際大会」(イタリア)で連続優勝。今回、世界王者にリベンジして実力を示した。
ロンドン五輪ではプエルトリコのレスリング界から初の五輪王者目指すことになる。湯元健一(ALSOK)の最大のライバルはクドゥホフと思われたが、ゴメスの方が手ごわいか?
【2011年世界選手権成績】
決 勝 ●[0-2(0-5,0-1)]Besik Seradinovich Kudukhov(ロシア)
準決勝 ○[2-1(1-1,0-1,3-0)]Dauren Zhumgaziev(カザフスタン)
4回戦 ○[2-0(0-1,1-0,2-1)]Zelimkhan Huseinov(アゼルバイジャン)
3回戦 ○[2-0(2-0,3-0)]Lee Seung-Chul (韓国)
2回戦 ○[2-0(1-0,3-0)]Ri Jong Myong (北朝鮮)
1回戦 ○[2-0(4-0,2-0)]Malkhaz Zarkua(グルジア)