2012.06.24

【明治杯全日本選抜選手権・特集】女子51kg級・志土地希果(至学館大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)

 まさかの逆転負けだった。昨年の世界選手権5位の実績を引っ提げ、2年連続世界選手権出場を果たすべく明治杯全日本選抜選手権に臨んできた女子51kg級の志土地希果(至学館大=右写真)。2回戦で高校生選手にまさかの逆転負け。今年の世界選手権出場の望みが、事実上、消えてしまった。

 昨年12月の全日本選手権は、五輪実施階級の48㎏級に階級を落として出場し、2回戦で櫻井宏美(ランクアップ平野屋)に敗れた。これは、階級ダウンそのものが無謀だったとも考えられ、大きなつまずきとはならなかっただろう。

 今年は本来の51㎏級に戻し、4月のジュニアクイーンズカップで優勝。最優秀選手に与えられるクイーンズカップも獲得し、2年連続の世界ジュニア選手権出場を手中におさめた。今回の全日本選抜選手権も優勝だけが目標だった。

 ところが、2回戦で全日本選手権5位の入江ななみ(福岡・小倉商高)相手に、第1ピリオドは奪ったものの、第2ピリオドを取られ、第3ピリオドはクリンチの防御の末に取られて逆転負けを喫してしまった。

■今年4月7日、兄妹で新たな勝利をマーク

 「どうして負けたのか分からないけれども、これが実力です」。志土地はそう振り返った。昨年の全日本選手権での敗北も、第1ピリオドを取りながらの逆転負けだった。

 「精神的にもっと成長しないといけない」と本人が振り返るように、逆転負けという“悪習”から脱却するためには、もっともっと精神的にたくましくなる必要がありそうだ。

 兄の翔大は、日体大の団体戦レギュラー選手で、2007年全日本大学選手権では66㎏級2位の成績を残すなど活躍した。兄妹とともにレスリングと育ってきた。そんな兄妹は数奇な運命である。なんと2人の誕生日が同じ(4月7日)なのである。

世界5位の実力を発揮できず、終了のホイッスルを聞いた志土地

 兄はレスリング活動には終止符を打ち、現在はプロ格闘家の高田延彦代表率いる高田道場に籍を置き、指導者として東京と福岡の道場を行ったり来たりの生活を送っている。

 そんな兄妹にとって、今年の誕生日の4月7日は忘れられない記念日となった。希果は前述の通りクイーンズカップ優勝し、兄の翔大は総合格闘技へ挑戦。「DEEP」という総合格闘技イベントで、デビュー戦を勝利し、妹とは違う舞台で一歩を踏み出した。

■希望を持ち続けるためにつけられた「希果」

 兄妹そろっての挑戦。希果の夢は世界チャンピオンであり、オリンピック出場である。今年の世界選手権出場は望みが薄くなったが、来年、そして4年後のリオデジャネイロでのオリンピックという夢がある。

 「希望を持ち続けてほしいという意味で、名前には『希』という字を入れたかったんです」とは両親の言葉。希果(まれか)という名前は本人もお気に入りだ。夢と希望に満ち溢れた志土地希果のレスリング人生の真価が問われるのは、これからだ。

 「これからは、もっともっと自覚を持って、勝負にこだわりたいと思います」と話した志土地は、今回の敗北を機に生まれ変わることを決意。過去の自分を捨て去り、勝負に対する執着心にこだわる腹積もりだ。この発言を聞けば、心機一転したことも十分にうかがえる。

 志土地希果という原石が輝くのは、4年後のリオ五輪!