※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)
日体大レスリング部初の快挙である。明治杯全日本選抜背主権の女子55㎏級で優勝した浜田千穂(右写真)のことである。
周知のように、この階級は“絶対王者”吉田沙保里(ALSOK)の独壇場だった階級だ。そんな吉田だが、最近では“絶対王者”との距離が短くなってきたと感じる関係者も少なくないはず。
昨年12月の全日本選手権で吉田は若手の村田夏南子(当時JOCエリートアカデミー/東京・安部学院高)に追い詰められた。その8ヶ月前のこの大会でも、吉田が第1ピリオドに村田に1ポイント奪われ、会場が騒然となったほど。吉田の後継者が着実に育っているのが現実だ。
今大会の女子55㎏級は、オリンピックを直前に控えた吉田はエントリーしていない。注目は村田に集まるはずだったが、その村田もひざの手術に踏み切ってで欠場となり、「誰が次のチャンスをつかむのか? 」というテーマに切り替わった。
そのチャンスを見事につかんだのが浜田だった準決勝の廣瀬理夏(法大)戦も、決勝の坂上嘉津季(愛知・至学館大)戦も、決して楽な闘いではなかった。だが、浜田は自分を信じた。
■高いし意識の男子選手の中で鍛えられる
「日体大からはたくさんのオリンピック選手が出場していますし、監督、コーチをはじめ選手たちの意識が高いので、緊張感もあります。日々鍛えられています」
浜田は、初優勝の原動力を「自信をつけたことが大きい」離す。4月のJOCジュニアオリンピックの55㎏級で優勝でき、今月初めのアジア・ジュニア選手権(カザフスタン)でも優勝したことが飛躍のきっかけになっている。「勝たなくてはいけない」という意識で今回の大会に臨んだという。
今大会の優勝者が9月の世界女子選手権(カナダ)の代表候補の一番手。この階級に関しては“絶対王者”のいる階級であり、日本代表に選ばれる可能性は高くない。それは浜田自身も理解している。「自分より強い選手がいる階級ですから、もっともっとパワーをつけて、どんどん練習します」と、このままでいいとは思っていない。
だが、自信をつけたのは大きい。もう、この階級における三番手であってはならない。世界選手権、そして4年後のオリンピックへ向け、“浜田時代”の幕開けとしたい-。