2012.06.19

【明治杯全日本選抜選手権・特集】男子フリースタイル74kg級・小島豪臣(K-POWERS)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)

 明治杯全日本選抜選手権の男子フリースタイル74㎏級で優勝した小島豪臣(K-POWERS)は「これが最後の大会のつもりで出場した。勝てて良かった」と話し、今大会を最後に、現役を退くことを明らかにした。

 小島といえば66㎏級の選手というイメージが強い。青森・八戸工大一高から日体大に進み、大学在学中の2004年に60kg級で全日本選手権を初制覇したあと階級を上げ、2006年にはアジア大会(カタール)で銀メダルを獲得。ロンドン五輪へ向けては、米満達弘(自衛隊)の国内の最大のライバルとして存在。66㎏級のトップ選手として活躍を続けた。

 ただ、オリンピックには縁がなかった。2008年の北京五輪で出場権を逃したあとは米満が急成長。米満が昨年の世界選手権で2位となり、日本代表選考レースで大きくリードされると、階級を上げて74㎏級で五輪出場の勝負をかけた。

 しかし、74kg級へアップしてから日が浅すぎた。強豪を退けて決勝まで進んだが、高谷惣亮(ALSOK)に敗れて2位。高谷の五輪予選での成績次第でロンドンへの道は残されていたが、成長著しい高谷が3月末に五輪出場枠を手にしたことで、夢をかなえることはできなかった。

決勝でタックルを決める!

■半年か1年経てば、またやりたくなる?

 五輪への道が断たれたあとは気力が沸かず、練習に打ち込めない日々が続いた。それでも「これまでお世話になった会社や応援してくれた人に恩返しをしよう」と気持ちを奮い立たせ、今大会への出場を決意。準決勝で肩を痛めるアクシデントに見舞われながらも、しっかりと有終の美を飾った。

 報道陣から「今日の闘いぶりなら、まだまだやれるのでは?」と問われると「気持ちも落ちたし、練習量も落ちた。レスリングは厳しいスポーツですから」と苦笑い。それでも食い下がる記者に対して「引退した先輩は、みんな半年、1年するとまたやりたくなるそうだから、少しは準備しておいたほうがいいですかね」と笑わせた。

 今後はレスリング以外の世界にも目を向けて新たな人生を歩んでいくつもりだ。「ちょっと疲れたので休憩したい」と微笑んだ小島を、青森から駆けつけた家族や友人たちがねぎらっていた。