※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
ロンドン五輪代表のうち、グレコローマン60㎏級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)、同96㎏級斎川哲克(両毛ヤクルト販売)、フリースタイル66㎏級の米満達弘(自衛隊)の3選手は関東の高校出身。今回で58回目の歴史を刻んだ関東高校大会にも出場し、きっちり優勝している過去を持つ。
面白いことに、松本は2003年フリースタイル54㎏級で優勝し、米満は2004年グレコローマン66㎏級で優勝と現在のスタイルが違っていること。斎川は2003年グレコローマン76㎏級で優勝と、当時からグレコローマンに長けていた。

男子代表9人中3人が関東出身の先輩! 今大会に出た高校生たちはみな同じ気持ちだっただろう。憧れの先輩たちの背中を追い、今大会で遂に「優勝」の二文字を勝ち取ったのが、松本隆太郎直属の後輩、グレコローマン60㎏級の中村旭昇(群馬・館林=
右写真)だ。
決勝戦で三輪勇斗(茨城・霞ヶ浦)をクロスボディロックから豪快に俵返しを決めてストレートで優勝を決め、3年にして初のタイトルを獲得した。
「松本先輩は憧れで目標で励みになった」と、五輪戦士となった松本の存在が中村の潜在能力を開花させた。同スタイル同階級というめぐりあわせも、中村の心を強く刺激した。グラウンドは、高校生には珍しく「クロスボディロック」の一点張り。「かっこいいし、大きいポイントが入るから」とリフト技を今大会も数多く決めて見せた。
群馬県生まれで、キッズの太田倶楽部出身。高校は「勉強もしたかったので普通科でレスリングがある館林に行きたかった」と、念願どおりの進路に進んだ。館林は五輪2連覇の上武洋次郎氏を輩出した伝統ある高校。近年でも文武両道で学生王者や全日本トップ選手を数多く輩出している。
中村は「館林に文武両道を果たした先輩がたくさんいることを知っていた」と先輩と同じく勉強にレスリングに打ち込んだ。
関東は制覇したが、今大会は夏のインターハイの予選ではなく、2週間後の群馬県予選で出場資格と取らなければ“最後の夏”に出ることはできない。中村は「絶対に今大会の優勝を無駄にしたくない」と気を引き締めた。反省点は「ローリングで1度返ってしまったこと。予選までに防御の練習を見直したい」と緊急修正を計る。
■針谷監督も五輪イヤーにあやかりたい!
館林は両スタイル合わせて3階級で決勝に進出し中村が優勝、フリースタイル66㎏級の木村優太とグレコローマン66㎏級の櫻井大輝が2位と好成績を残した。針谷豊監督も「松本隆太郎効果は本当にあります」と笑顔。「私が館林に赴任して今年で10年。まだインターハイに出ても1回戦を勝ち抜いていない。県予選を勝ち抜いて、全国の舞台で初勝利を挙げたい」と松本隆太郎の五輪の“壮行試合”となることを誓った。