2012.06.04

【第1回関東高校女子大会・特集】インターハイ女子実施への第一歩

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

女子のインターハイ実施へ向けて行動を起こした枝迫興一郎氏

 ロンドン五輪開幕まで2ヶ月を切った。五輪V2の吉田沙保里と伊調馨(ともにALSOK)が3連覇に挑戦するレスリング女子は以前と変わらず注目を浴び盛り上がっているが―。

 6月3~4日に茨城県水戸市・茨城スポーツセンターで行われた関東高校大会と同日程で、第1回関東高校女子選手権が同所で行われた。現在、レスリングの女子は全国高体連レスリング専門部に所属しておらず、インターハイでは男子のみが実施されている。それは関東高体連も同じだ。

 「なぜ女子が高体連にないのか。このままではいけない!」と立ち上がったのが、関東高体連レスリング専門部の枝迫興一郎理事長(神奈川・釜利谷高職)だ。「2、3年前から女子を指導するようになったのがきっかけです。女子も男子と同じように頑張って練習に励んでいる。レスリングに女子も男子もないでしょう。男子と同じように試合が組まれていないことに疑問を感じた」と、自ら積極的に大会開催に向けて行動してきた。

 白羽の矢が立てられたのが関東高体連だ。「関東高校大会は58回もの歴史があり、関東高体連は組織や運営がすごくしっかりしているんです。この運営の中なら女子を入れてもやれるのではないかと思いました。ただ、言うだけではだめなので、理事長の私が先頭を切ってパンフレットの準備からすべてをやり、『もし失敗した時の責任は私が取る』と言って実行しました」。

 理事の全員が賛成したわけではないが、枝迫理事長の熱意で、関東高体連とは別主催という形で実行するに至った。

インターハイ出場への思いを口にした鈴木

 綿密な準備が功を奏して、41人分の女子の試合が加わっても予定通りにスケジュールが進み、女子の“初代MVP”は女子65㎏級で優勝した鈴木紅夏(群馬・太田商)が選出された。鈴木は、「4月のJOC杯が終わってからは、8月の全国高校女子選手権まで県外選手との試合はないと思っていたので、6月に対外試合ができてうれしい。今大会の試合で自分の問題点が見つかり、今後につながった」と話し、大会運営者に感謝の意を示した。

 鈴木は男女共学の太田商レスリング部に所属している。「同じ部の男子がインターハイに出ている。私も同じように出たい」と、インターハイの3スタイル実施への希望を口にした。

 紆余曲折を経てこのような形で開催された関東女子選手権。枝迫氏は今年度開催にこだわりがあった。「今年はロンドン五輪の年で、風が吹いています。今やらないと、いつ実現できるかわからない。私のようにレスリングに生かされている者の使命だと思って行動しました。各ブロック大会でも関東を見本に女子を取り入れてもらい、実績を作り、それをステップにインターハイの種目となることを目指します」と、今後の構想を熱っぽく話した。

 インターハイの女子実施へ向け、力強い一歩がスタートした。