※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子)
日本で初のファイトを披露したイリーナ・メルレニ
まだ正式にウクライナの代表には決まっていないそうだが、五輪出場枠を取ったのはメルレニであり(今月最初の五輪最終予選)、「代表になることは100パーセント決まっている」とのこと。今大会は、予選の激戦から時間が経っていないことで、減量を避けて51kg級に出場したそうだ。
「オリンピック前の実戦経験とコンディションづくりの目的は達成されました」と口にする一方、「みんなが私を研究し、私を倒すことに必死で向かってきました。大変でした」と表情を引き締めた。48kg級の日本代表に決まっている小原日登美(自衛隊)は、2000年世界選手権(ブルガリア)でともに初優勝を遂げた“同士”。「とても素晴らしい選手です。(オリンピックでは)ぜひ闘いたい選手です」と話した。
■「レスリングなしの人生は考えられません」と2度目のカムバック
2006年に長男を出産。2008年北京五輪のあと、ひざの手術と2度目の出産のためにマットを離れた。昨年3月に次男が生まれ、今年に入って再度のカムバック。その間にはタレント活動もしていた。輝かしい栄光を背に、もう現役引退してもおかしくはないが、「レスリングが好きなんです。歌とかダンスとかもできますが、レスリングなしの人生は考えられません」とマットに戻ってきた。
また、昨年9月の世界選手権でウクライナ代表(オレクサンドラ・コート)が五輪出場枠を取れなかったため、「自分がいくしかない」と思ったことも、復帰を後押ししたようだ。したがって、本格的な練習を再開してから約8ヶ月。あと2ヶ月半のうちにさらに実力を取り戻していくことが予想され、2kgオーバー計量の51kg級で闘った今回の結果を、2ヵ月半後の実力と思ってはならないだろう。
51kg級では力を出せなかったが、ロンドン五輪へどう仕上げてくるか
なお、このインタビューの通訳によると、「あと2人生む」と口にしたのは、今回の滞在で小原日登美と話をする機会があり、小原が「子供は3人ほしい」と言ったことで、「あと2人(合計4人)」と言ったらしい。マットを離れたところでも、世界チャンピオンへのライバル意識むき出しだ。
「今大会は結果を出すことができませんでしたが、ロンドンでは最後まで自分を信じて闘います」-。
48kg級はメルレニ、小原のほか、北京五輪チャンピオンのキャロル・ヒュン(カナダ)、2009年世界チャンピオンのマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)と既婚者がずらり。“世界最強の妻”の称号を手にするのは、だれか。