※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
高校のデビュー戦を優勝で飾った藤波
藤波はカデット・フリースタイル54㎏級に出場し、決勝では茨城・霞ヶ浦の樋口黎を2-1で下して優勝を決めた。監督は父・俊一氏。親子二人三脚で始まった高校デビュー戦は、格の違いを見せつけるには十分すぎる試合内容だった。
■高校へ進学し、新鮮な気持ちで再スタート
全国中学生選手権3連覇の前哨戦となった昨年のこの大会は、王者として追われる立場で、精神的にきついものがあった。「今回は、また1年生になったので挑戦者の気持ちで闘いました。また新鮮な気分になれて楽になった」と、伸び伸びした試合を展開。準決勝では瀬野春貴(愛知・星城)をわずか43秒でフォール勝ちし、体力に余裕をもって決勝に臨んだ。
決勝の相手、樋口も準決勝までの4試合中3試合をフォールやテクニカルフォールで勝ち上がり、調子のよさを見せた。第1ピリオドは0-1で落としたが、第2ピリオドはギアを入れ替えて2-0で奪い返した。勝負の第3ピリオドは、ともに警戒しすぎてこう着状態が続いてしまった。
残り30秒を切っても互いに仕掛けられず、このままクリンチ勝負かと思われた残り20秒、「クリンチ勝負ではダメだと思った」という藤波が両足タックル。そこから試合はめまぐるしく動き、一瞬、樋口のカウンターで足をつかまれそうになったが、それをエスケープした藤波は、樋口の技が尽きたところで再度アタック。ニアフォールで試合を決める2点をもぎ取った。
左から松尾侑亮、藤波監督、藤波勇飛
■フリースタイル69㎏級の松尾侑亮も優勝
いなべは学校対抗戦より個人戦のイメージが強いが、高橋が高校チャンピオンになって以降、他のメンバーの活躍も目を見張る。ポスト・高橋にスーパールーキーの藤波が入部したが、フリースタイル69㎏級では松尾侑亮が優勝。50㎏級でも藤田雄大が3位に入賞し、軽量級の層の厚さを見せ付けた。
松尾は「高校選抜王者の屋比久翔平選手がグレコローマンに出場したので、チャンスだと思った」と、王者不在という好機をものにした。前年までは部の事情から84㎏級にエントリーしていたが、今年はベストの66㎏級(JOC杯は69㎏級)で挑戦することを決めている。また、「レスリング始めて11年目で、初めての海外遠征です」と、優勝者が派遣される予定の世界カデットにも期待を抱いていた。