2012.04.25

【JOCジュニアオリンピックカップ・特集】3月に続いて浦添工勢が活躍、宮国雄太が価値ある優勝

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 3月の全国高校選抜大会(新潟・新潟市)の学校対抗戦で、沖縄県勢として初の全国制覇を達成した浦添工。JOCジュニアオリンピックカップでも、全国制覇の勢いそのままに旋風を巻き起こした。

 3年前の全国中学生選手権MVPを経て昨年のインターハイ84㎏級で2年生ながら優勝した84kg級の与那覇竜太は、大学生が主戦場のジュニアの部に出場して3位と大健闘。全国制覇の柱となったカデットの部グレコローマン69㎏級の屋比久翔太が圧倒的な強さで優勝した。

左から与那覇、屋比久、宮国、OBの赤嶺

 全国高校選抜大会より成績を上げたのが、100㎏級の宮国雄太だ。全国高校選抜大会で2位に甘んじた悔しさを晴らして優勝を遂げ、世界カデット選手権(8月、アゼルバイジャン)の代表入りを果たした。

 今大会は屋比久保監督以外にも同高OBで全日本学生選手権グレコローマン96㎏級2位の赤嶺希(青山学院大)が頼もしいサポート役として加わった。JOC杯は大学生も参加するため、赤嶺は青学大と掛け持ちで母校のサポートも務めることができたのだ。

 先日、悲願の全国制覇を成し遂げた際、屋比久監督が「赤嶺が(太田浩史監督の)許可をもらって帰省し、高校生に練習をつけてくれた。陰の功労者です」と振り返ったように、赤嶺の存在がチームを大きく飛躍させた。

 赤嶺との練習で一番の恩恵を受けたのが、今大会100㎏級で優勝した宮国だ。レスリング歴はわずか2年。経験不足だが、赤嶺との練習が実力を高校トップレベルに押し上げたといっても過言ではないだろう。宮国も「赤嶺先輩がライバルの分析をしてくれ、仮想の相手をしてくれたことが試合に生きた」と口にした。

■センバツと同じ失敗はしない!

 全国高校選抜大会の学校対抗戦の花咲徳栄(埼玉)との決勝戦は、昨年のJOC杯カデット・フリースタイル100㎏級優勝の山本晋を2-1で破って殊勲の白星を挙げた。だが、個人戦は決勝で近藤千加良(岡山・高松農)にストレートで敗退。W優勝とはならなかった。

 「団体で勝ってうれしかったけど、個人戦で負けて、喜びが半減というか、ほとんどなくなりました。地元に帰って、学校のみんなが『おめでとう、個人戦は惜しかったね』と言ってくれて、少しは心の傷がいえましたけど…」。

全国高校選抜大会V逸の悔しさをばねに優勝した宮国

 悔しさをばねに、JOC杯の舞台での活躍を誓って練習に取り組んだ。仕上がりはよかったものの、初戦で相手のバッティングによってまぶたを切るアクシデントに見舞われた。「選抜の決勝も、頭突きされて右目が腫れ、視界が狭まったんです。見えない角度から相手に攻撃されて、ポイントを奪われた」と嫌な過去が脳裏をよぎり、初戦はバタついてしまったそうだ。

 だが、同じ轍(てつ)は踏まない。準決勝、決勝とまぶたのけがを気にすることなく自分のレスリングを展開。決勝ではわずか18秒でフォール勝ち。個人戦で初の“日本一”を決めて見せた。

 2位だった昨年は、アジア・カデット選手権に出場することができ、3位に入賞できた。宮国は「世界カデット選手権はレベルが高いのですが、目標はあくまでも優勝。メダルは絶対に持って帰りたい」と抱負を語った。