※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)
決勝で鴨居正和と闘う池田
決勝の相手の鴨居正和(山梨学院大)は全日本大学選手権の決勝ででも闘っていた。その時は2-1(2-0=2:04,0-1,1-0)という大激戦での勝利。「頭ひとつ抜け出したい」と話していたが、「五分でした。距離が開かなかった。結果として2-0で勝ちましたが、第1ピリオドはクリンチでしたから」と、喜びより物足りなかったという言葉が口をつき、欲の深い姿勢を見せた。
それでも、第2ピリオドは1点を取ったあと反撃を許さない展開ができ、この部分は満足そう。鴨居とは中学時代に負けた後、昨秋にリベンジし、これで2連勝。「自信がつきました。取り切る力を身につけ、もっと実力をつけたい」と、勝ってかぶとの緒を締めた。
■初めて第1シードで臨んだ大会にプレッシャーを感じた
1年生で大学王者に輝いたのなら、ジュニア世代の大会では勝てて当然と考えられてもおかしくない。事実、今夏のロンドン五輪出場を決めた高谷惣亮(拓大=現ALSOK)など、1年生大学王者としてこの大会に出場した選手の多くは優勝を飾っている。
しかし勝負の世界に“絶対”はない。闘う本人にとっては、過去の例など、気休めになることはあっても、勝利を保証する“担保”にはならない。池田は「初めて第1シードで臨んだ大会。プレッシャーが大きかったです」と振り返る。
全日本大学選手権のすぐあとにあった東日本学生秋季新人戦でも優勝しているが、「あの時は第1シードではなかったし、試合が続いていたので負けても仕方ない、みたいな感じでした」と言う。試合間隔が開き、新たな年度のスタートとなった大会では、周囲が想像する以上に重圧があったようだ。
それは初戦の大角翔(専大)戦で第1ピリオドを落とすというスタートにつながった。「脚がふわふわしていた。減量失敗かな?」と思ったそうだが、逆転で乗り切ってプレッシャーを一掃。2試合目以降は本来の力を発揮して決勝までたどりついた。
優勝を決め、喜ぶ池田
■早くも日本代表としての自覚
世界ジュニア選手権(9月、タイ)は「日本代表として、みんなの分まで闘ってきたい。初戦敗退で帰ってきたら、他の人に申し訳ない」ときっぱり。早くも日本代表としての責任感を感じているようで、その気持ちがさらに実力をアップさせそう。
ロンドン五輪へ向けて、国内で最も熱い闘いが展開されたフリースタイル60kg級。今回の五輪とは無縁だが、若い世代で力強い戦力が育ちつつある。1年生大学王者の2012年が楽しみだ。