※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
JOCジュニアオリンピックカップの最優秀選手に送られるJOC杯の男子は、ジュニア・フリースタイル55㎏級・森下史崇(日体大)が2年連続で受賞し(右写真)、最後となるジュニア選手権を最高の形で締めくくった。
早生まれのため、大学3年生でもジュニアの部に出場できた森下は、「早生まれで、(先輩だから)負けちゃいけないというプレッシャーがあったし、周りからも勝って当たり前と言われた」と、変な力みがあった。2回戦の川野陽介(自衛隊)戦では持ち上げられ、タックルなどでバランスを崩して失点する場面もあった。
しかし、徐々に調子をあげて高校時代からしのぎを削る高橋侑希(山梨学院大)との決勝戦では、開始24秒、タックルからの攻撃で1点を獲得。「1点を簡単に取れたので、いけると思った」と、第2ピリオドも勢いがついた。48秒にタックルからのワンツー攻撃で3点をゲット。リードしたあとも攻撃の姿勢を崩さずにタックルを出し続けた。ラスト20秒、高橋が一発逆転を狙って組み付いてからの足刈りにも、落ち着いて反応して、相手を押さえつけた。
■昨年はJOC杯優勝の勢いをその後につなげられず
2009年の奈良インターハイから何度も緊迫した好勝負を繰り広げた2人。昨年のこの大会は、クリンチが2回と膠着した試合の末に森下が勝った内容だったが、今回は積極的にアクションを起こし続け、常にペースを握っていた。「高橋選手のことは意識はしてなかった。いい形でポイントが取れた。高橋選手はカウンターを狙っていて、それに付き合うと去年のようにクリンチになるので、自分からどんどん攻めたのがよかった。自分らしいレスリングができた」と、決勝は満足な試合で終えた。
余裕すらただよわせて2連覇を達成した森下
3年前、高校(茨城・霞ヶ浦高)3年生でこの大会のジュニアの部で優勝した森下も、大学3年になった。「今年は狙って勝てるようにしたい。世界ジュニア選手権(9月、タイ)では金メダルを取りたいし、5月の東日本学生リーグ戦は初めての出場になるので、楽しみです」。最高のスタートを切った森下が、最高のシーズンへ走り出した―。